世界各国で仮想通貨に対し、支持する意見と懐疑的な意見との賛否両論が続いています。JPモルガン・チェースのCEOである、ジェイミー・ダイモン氏はビットコインを詐欺と呼び、ビットコインを取引する人は愚かだとまで言いました。

最近では、ダイモン氏はビットコインに対しての見識を見直してきていると考えられ、適切な管理、規制の元では使用することに寛容だという発言もしています。しかしながら何かしらの意図があった上での発言かもしれないと、一部では警戒する声も見られています。

ダイモン氏は金融業界において影響力のある著名人には違いありませんから、この一連の言動から振り回されてしまったという方も散見されました。真に受けた仮想通貨投資家の中には、慌てて売却してしまいその後2倍以上価格を付けたことでもダイモン氏に対して良い印象をもっていない方も見受けられます。

また、ダイモン氏に限らず、例えば2013年にノーベル賞を受賞した経済学者である、ロバート・シラー氏は「ビットコインの価値は非常に曖昧だ」と指摘しています。シラー氏は、ITバブル崩壊や、サブプライム危機に対して警鐘を鳴らしたことでも知られています。

現状で、仮想通貨市場は投機的であることには間違いないと言えるでしょう。米国では自宅を担保にしたり、クレジットカードで借金をするなどで資金を集め、仮想通貨に投資する事例も出てきています。

仮に仮想通貨がバブルだとして、これが崩壊することがあれば人々は熱狂から覚めることになります。それはいつになるかは明らかではありませんが、その時は本当に価値のあるコインだけが残ると予測されています。

スタンドポイント・リサーチ社の創設者であり、アナリストのロニー・モアス氏はドットコムバブルになぞらえて予測をしていますが、生き残るのはほんの一握りのコインであり、時価総額で上位20位ほどまでのものでポートフォリオを組むことが望ましいとしています。また、ビットコインについては最近予測を上方修正し、最終的には1ビットコイン=40万ドル(約4,530万円)まで上がると考えています。

ビットコインが2009年に誕生した時、その目的は電子的なクロスボーダー決済システムであることでした。問題は今、ビットコインが記録的な高値であり、従来の決済システムの方がより早く、より良い手段になっているということです。

ビットコインは、取引する人々の信用に値する固有の価値があるとは言い難いのが現状です。多くの人が言うように、「デジタルゴールド」になる可能性もありますが、その場合には価格が上昇します。これでより使いやすいものになるでしょうか。一部の高額決済で使用されるのみではないかとの指摘も増えています。

しかし、将来的には他の仮想通貨がその有用性により、ビットコインを上回る可能性が高いとの見方もされています。

イーサリアム(Ethereum)はユーザーがアプリケーションを構築するためのプラットフォームとして多く活用されています。イーサリアムのブロックチェーン技術はビットコインよりも優秀で、例えば、マイクロソフトやJPモルガンのような企業が活用に向けて実験を行っています。AXAによる航空便遅延保険「fizzy」がリリースされたことや、世界最大の金融持株会社UBSがプラットフォームを採用したことも大きく話題となりました。

最大の特徴としてスマートコントラクトの設計があります。これは、記録された特定の条件が満たされた場合に、その契約内容が履行される仕組みになっており、ビットコインよりも多くの情報が記録できることや、トランザクション性能も上回っています。多くの企業で活用方法を見出すべく研究、開発が進められています。

また、Ripple(リップル)社のデジタルアセットであるXRP(エックスアールピー)は、異なる通貨の間での取引を円滑にするためのブリッジ通貨として機能し、クロスボーダー決済をリアルタイムで実現します。

リップル社は100を超える金融機関など企業と提携し、最近ではアメックスとの提携や、ビル&メリンダ・ゲイツ財団とMojaloopのシステム開発、SBI Ripple AsiaのRCクラウドにソリューションを提供するなど数々の功績を残しています。現在、SBI Ripple Asia主導でのRCクラウドを使った日韓合同での送金実験も注目されており、来年の実用化を目標に取り組みが進められています。

イーサリアムやリップルにとって、2017年は大きな飛躍の年にもなりましたが、ともに試験段階でもあります。しかし、将来的には大きく評価されると考えられています。

例えば、リップルが何兆ドルもの国際送金を処理するようになった場合、今の価格でXRPに投資することはできないでしょう。イーサリアムも同様に保険や貿易金融などの取引に実用されれば、評価額を上げることになることは想像に難くありません。

これは単純に希望的観測とも考えられますので、すべてが実現するとは限りません。例えば、イーサリアムのプラットフォームやリップルのソリューションの性能をはるかに超えるものが開発されれば、より良いものに取って代わることもあるでしょう。

数多くの仮想通貨が毎日取引されていますが、いずれにしろ今日の形で市場がそのまま続くことはないと予測されます。このバブルとも言われる状況が崩壊すれば、市場にとって本当に必要なもの、明確なビジョンがあるものだけが理解され、真のイノベーションが実現されると考えられます。