インフレが加速している南米ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は3日、国営テレビの番組の中で、仮想通貨「ペトロ」を導入する意向を示しました。ベネズエラの自国通貨であるボリバルの下落が続き、歯止めが効かない中で、また、米国による経済制裁に対する金融政策の考えとしています。

仮想通貨「ペトロ」はベネズエラに埋蔵される資源、金やダイヤモンド、天然ガス、石油などに価値を裏付けしたものだといいます。こういった形で価値を持たせるということですので、構想としては、CBDC(中央銀行発行のデジタル通貨)や、例えば、自国通貨と等価の暗号通貨(スウェーデンのeクローナ、ロシアのクリプトルーブルなど)のようなものではなく、ビットコイン(BTC)のようなものになると考えられています。

このような仮想通貨を導入して、外貨獲得ができるかといったところは判断が難しいところです。また、これを実現させるためには、議会の承認が必要であり、経済が混乱している現状では仮想通貨ペトロが実現されるには障壁があり、野党からは疑問の声も出ています。

今年7月では1ドル=1万ボリバルでしたが、12月1日には1ドル=10万3,000ボリバルと、10倍以上下落しています。また、IMF(国際通貨基金)によると、ベネズエラのインフレ率は、2018年に2,000%以上の予測がされています。

本来こういった自国通貨の安定しない国や地域こそ、ビットコインなど仮想通貨の利用が望ましいと考えられますが、国自ら発行するというのは新しい試みでもあります。以前、世界最先端の電子国家とも言われるエストニアでは仮想通貨「エストコイン」のICOを検討していましたが、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は、ユーロ圏での通貨はあくまで、ユーロであるべきだと指摘。これによる影響か未だICOは実現されていません。

電気代のかからないベネズエラでは個人でのマイニング(採掘)などもされていますが、警察がマイニングマシンを押収し、その押収品のマイニングマシンを使用して警察自身がマイニングを行うといったことも日常茶飯事です。このような背景からマイナーは比較的見つかりにくくするため、普通のPCを装ってGPUマイニングのできるイーサリアム(ETH)などに移行しているという話もあります。

今回のペトロ導入は、ビットコインの最近の高騰を受け、この様な構想に至ったとの見方もされており、ベネズエラ経済の回復を狙うマドゥロ大統領の今後の動向が注目されています。