150年以上の歴史を持つスイスの大手金融UBSの会長、アクセル・ヴェーバー氏がビットコインには通貨としての重要な機能が備わっていないとして、一部懐疑的な見解を示しました。
ヴェーバー氏は、2004年から2011年までドイツ連邦銀行(ドイツの中央銀行)の総裁を務めていて、国際金融市場の主要プレーヤーでもあります。また、金融の国際化を積極的に進めており、現ドイツ連邦銀行の幹部にもこの姿勢が受け継がれています。
そのヴェーバー氏ですがSwiss Finance Institute(スイスの金融研究所)が主催した会議で、ビットコインについて自身の見解を以下のように述べました。
「通貨として重要な機能は、決済手段であること。それには一般に受け入れられなければならず、価値の保管ができ、さらに取引通貨でなければならない。しかしビットコインは取引通貨だけにすぎません。」
また、ヴェーバー氏のビットコインについての見方は、中央銀行としての背景もあると前に置いています。
投資目的の資金は多く流入している傾向にあり、市場も拡大しているビットコインですが、実際に決済に使用するとなるとユーザーの割合も少ないのが現状です。しかしながらビットコインはボラティリティ(価格変動率)が非常に高く、今年4月頭には1,000ドル(約11万円)前後だったのに対し10月5日現在では4,200ドル(約47万円)を推移しています。市場に大きな懸念が走れば1日で20%以上価格を下げてしまうことも少なくありません。1週間で30%以上暴落したこともあります。(CoinMarketCapの統計より)
身近な例としてドルを例えに説明すると、昨日まで1ドルが110円だったのに次の日には130円にもなってしまう恐れもあるということです。これでは決済に使うにしてもドルや円を使った方が安全です。その一方ではこの価格の乱高下に魅力を感じてトレードを行う方も増えています。自国通貨の信用がない国や地域では利用機会がありますが、一部の限られた地域であり、世界的に普及となるとまだハードルは高いとの見方もされます。
現在、UBSは米IBMと貿易金融向けのブロックチェーン・プラットフォーム「バタビア(Batavia)」を共同開発中で、BMO(モントリオール銀行)、CaixaBank(カイシャバンク)、Commerzbank(コメルツ銀行)、Erste Group Bank(エアステグループ)といった各国の大手銀行で貿易金融取引をサポートするプロジェクトを進めています。
ヴェーバー氏は、通貨の定義として決済手段であることを第一に挙げていますが、ビットコインの根幹であるブロックチェーン技術には前向きな姿勢が伺えます。IBMと開発中の新しいプラットフォームで実現できることに多く期待されています。