アラブ首長国連邦を構成する首長国のひとつ、ドバイで政府による仮想通貨「emCash」を発行することが分かった。

ドバイでの法定通貨はディルハムが利用されているが、今回発行を予定しているemCashは主にドバイの一部の政府および非政府でも利用されることを構想しており、これによってコーヒー代から子どもの学費、公共料金まで支払いができるようになるという。

開発はDubai Economy(ドバイ経済)の子会社であるEmcreditと、英国に本拠を置くObject Tech Grpというブロックチェーン関連のスタートアップと提携するとし、Emcreditが立ち上げたウォレットのemPayを通じて利用可能になるという。

以前、DFSA(ドバイ金融サービス機構)はICOがハイリスクであることから、投資家に向けて注意喚起をしていたが、仮想通貨の受け入れに関しては積極的な姿勢が伺える。

ドバイ経済副次長であるAli Ibrahim(アリ・イブラヒム)氏は、以下のように話した。

「仮想通貨は、処理速度の高速化、納期の短縮、コストの削減など、多くのメリットがあります。ドバイで生活する人々にとって、ビジネスの効率化と生活の質を向上させるために、イノベーションを活用することでさらなる大きな飛躍を目指します。」

ドバイは「中東のシンガポール」とも呼ばれ、金融セクターとしては中東の都市で首位に評価されている経済的にも活性的な地域である。このような国において独自の仮想通貨を発行するとなれば、市場への流通も気になるところではあるが、一般的に認知されるビットコイン(BTC)のような仮想通貨とは少々使い方が異なり、どちらかと言えば、BISが定義したCBCC(Central Bank Cryptocurrencies)のような仮想通貨に近いものと考えられる。

今回開発を行うEmcreditのCEOであるMuna Al Qassab氏は以下のように見解を示した。

「ユーザーはemPayプラットフォーム上で2つの支払いオプション(ディルハムまたはemCash)のうちどちらかから選ぶことができます。ディルハムでの支払いは従来の決済手続と変わらず、仲介業を介し手数料がかかるが、emCashでの支払いはユーザーと販売事業者間で直接決済することができる。ようするにemCashはリアルタイムで価値の移動を実現し、詐欺やインフレの削減にも貢献できます。」

ドバイの市民が決済に利用することを目的としていれば、おそらく価格変動は安定したレート、例えば法定通貨ディルハムのようにドルに連動したものである可能性も考えられる。CBCCとして、国際間での決済にも利用されるのかは現時点では明らかではないが、ドバイのような金融セクターが独自の仮想通貨を活用していくことで、ますますのブロックチェーン技術の発展が期待される。

参考:MENA Herald