BIS(国際決済銀行)は17日、中央銀行が発行をする仮想通貨について報告をまとめた。その中で、中央銀行が発行する仮想通貨をCBCC(Central Bank Cryptocurrencies)と名付け、金融機関が利用する大口取引のものと一般的に利用される小口取引用のものと、2つに分ける必要があるとした。
送金速度やコストの削減など多様性から、ブロックチェーン技術を用いた送金が日々検討されている。先日はみずほフィナンシャルグループとゆうちょ銀行が取りまとめる日本円と等価の仮想通貨「Jコイン」の構想が発表されたが、このような日本円と等価の送金用の仮想通貨を日銀がCBCCとして発行を検討する可能性も出てきた。
仮に国際間での決済用に各国がCBCCを導入することで24時間365日、即時送金できればユーザーとしては便利なことこの上ない。その一方では、個人間での銀行を通さない送金が一般化されてしまえば金融機関にとっては脅威にもなりかねない。BISでは、こういった金融機関への影響も課題のひとつとして考えていく必要があると指摘している。
また、ビットコインなど価格変動の激しい仮想通貨が国の通貨と置き換わることは考えづらいが、ブロックチェーン技術や分散型元帳技術(DLT)に関しては実用的であるとしている。
例として、一般向けのCBCCでは米ドルと並行することを構想し、FRB(米連邦準備制度)が発行する「FEDコイン」などが想定されるが、実用化されるためには、中央銀行で現金の取引と同じく、仮想通貨でも取引の匿名性を保つべきかといった点も課題となる。こういった課題もあるため実用化までにはまだ時間がかかりそうだ。
金融機関向けのCBCCでは、中央銀行を介した大口取引をブロックチェーン技術を使うことも検討されている。例としてBank of Canada(カナダ銀行)発行の「CADコイン」などがある。この場合は従来のRTGS(即時グロス決済)と比較したうえでコストや効率が改善するかどうかが課題。また、各国の中央銀行と連携して導入していくにも障壁があると考えられる。
各国では仮想通貨に対する取り組みに温度差も見られる。スウェーデンのように、現金の使用が急速に減少している国では2018年末までに自国の仮想通貨「Eクローナ」の導入を検討しているが、エストニアの仮想通貨「エストコイン」についてECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は「ユーロ圏の加盟国が独自に仮想通貨を導入することはできない。」と指摘をした。
すべての中央銀行では、最終的に小口と大口のCBCCを発行することが合理的であるかどうかを決定する必要がある。この決定にあたって中央銀行は、顧客のための匿名性やセキュリティ、利払いや利便性だけではなく、金融システムや経済全体に及ぼすリスクについても課題は山積みだ。こういった対応も急がれる中、各国の今後の動向にも注目していきたい。