麻生太郎金融担当相は10日、7月17日付で森信親金融庁長官が退任し、後任として遠藤俊英監督局長を新長官に起用することを発表した。

3年にわたって金融庁の森体制を支え続けた遠藤監督局長は、東大法学部卒で旧大蔵省に入省したキャリアを持ち、2014年には金融庁検査局長、2015年には監督局長を歴任した。政府からは金融機関の実情に詳しく、温厚な人柄であることを評されている。

現長官である森氏は、消費者保護と消費者の利益目線を大事にしており、金融機関に顧客本位の経営改革を迫るなど、地方銀行の再生にもメスを入れる剛腕な人物としても知られており“最強長官”といった異名を取る。

しかし2018年に入ってからは、仮想通貨取引所である“コインチェックの巨額流出事件”が発生したこともあり、認可前のみなし事業者を長期間許容していた金融庁の監督責任が問われたことや、経営改革を進める地銀の成功モデルとして推奨していたスルガ銀行で発覚した“かぼちゃの馬車事件”などで苦境に立たされた。

仮想通貨業界に対しては、杜撰な管理と運営体制を露呈した国内仮想通貨取引所の一斉再建、つまり市場の健全化のために利用者保護の方針を明確に打ち出してことで、2018年以降の厳しい姿勢ばかりが取り沙汰されたが、当初は産業の育成を第一に掲げて、2017年4月には改正資金決済法を施行した。

世界に先駆けては仮想通貨を決済手段に一つとして認め、フィンテック市場の成長を促進してきた功績は、国内外から高く評価されている。

さらに日本政府のスローガンである貯蓄から資産形成へと定着させるために、株式市場でもNISA(少額投資非課税制度)の仕組みを定着させるなど、金融業界には大きく貢献している。

今回、異例とされる3期続投の大役を果たした森長官の交代は、金融庁本体だけでなく金融関係者にとっては大きな分岐点になることは間違いないだろう。遠藤氏により、仮想通貨業界の方向性がどのように向くのか今後注視していく必要がある。