国内大手仮想通貨取引所の「Coincheck(コインチェック)」から、仮想通貨のネム(XEM)が不正送信された問題で、金融庁は2日、午前8時頃にコインチェックに対し、立ち入り検査に入りました。

すでに業務改善命令を発出しており、2月13日を報告期限としていましたが、これの期限前の立ち入り検査は異例となります。麻生金融相によると、このような措置となったのは、「利用者の資産の保全を確実にするという観点から」とし、顧客保護を優先としています。

主な内容は、「顧客から預かっている資産の管理」や、「流出したXEMの補償に充てる自己資金」の詳細状況などを調査していると見られています。

XEMの不正送信があったのは1月26日、ちょうど1週間でのできごとですが、この日からXEM以外の仮想通貨の入出金および取引のサービスが停止。現在は日本円の入金は可能ですが依然、出金ができず不安な声も散見されます。

また、今回の不正送信の被害に遭ったXEMの損失分をコインチェックは日本円で1XEM=88.549円で補償するとしていますが、ユーザーの中には現物のXEMで返して欲しいといった声もあり、こればかりは賛否両論が分かれるところです。

2日14時現在、1XEM=63.259円で価格が推移していますので、早急に返金が行われれば「ネムを買い戻して枚数を増やしたい」というユーザーの声もあります。仮にコインチェックが再開した場合はユーザー数を考慮すれば、ボラティリティ(価格変動率)が拡大する可能性が高いので、購入するには慎重な判断が求められます。

また、NEM財団は、ハッカー(攻撃者)が盗んだXEMを売却(現金化)することは難しいとしており、引き続きアカウントの監視を行っている模様です。

【※以下追記】

2日18時、NHKニュースによると今回の金融庁の立ち入り検査を受け、コインチェックの広報担当は顧客への補償について以下のように述べています。

「返金できる時期のめどは立っていないが、自己資金で補償できるという考えに変わりはない。」

また、コインチェック社の資金と顧客の資金を分別管理しているか?という点については、

「事実確認をしているところで、確かなことがわかってからお伝えする。」

と説明しています。

3日13時、コインチェック公式サイトにて、日本円出金再開の見通しを以下のようにアナウンスしました。

「日本円出金に伴う技術的な安全性等について、確認・検証中であり、再開に向けた準備を進めております。外部専門家の協力も得つつ行っている確認・検証を踏まえ、皆様には日本円出金の再開時期をお知らせいたします。」

明確な再開時期の発表には至りませんでしたが、現在コインチェックでの顧客資産の保管状況については以下のように説明しています。

「お客様がアカウントに保有している日本円につきましては、金融機関の顧客専用口座に保全されております。また、お客様がアカウントに保有している仮想通貨(BTC/ETH/ETC/LSK/FCT/XMR/REP/XRP/ZEC/LTC/DASH/BCH)につきましても、ホットウォレットから退避し、コールドウォレット等に保管しております。」

6日13時、ロイターの最新の報道により、コインチェックから約580億円の仮想通貨が流出した問題に、北朝鮮のハッカーが関与した可能性があるとの見方を示しています。韓国国会の情報委員会の中で、関係筋による情報としています。

関係筋の1人は、仮想通貨市場は大規模かつ規制の緩さから、北朝鮮のハッカーの恰好の的とされる可能性が高いとも考えられています。しかしながら、今回のコインチェックの問題に北朝鮮が関与した明確な証拠はないとのことです。これが事実かどうか明らかではありませんが、今後も当局による追及はされると思われます。

6日、共同通信の報道によると、麻生太郎財務相兼金融担当相は、閣議後の記者会見の中で以下のように述べました。

「預かっている金を返しただけでは(課税対象に)ならないが、(利益を上げたかの)形による。」

日本円で返金するケースでは、返金額がNEMの取得価格より上回っていれば所得税の課税対象とする可能性も考えられます。これについては、以下のように述べています。

「どのように(課税対象を)捕捉できるかが別の問題としてある」

日本円での返金後、税金の扱いまで視野に入れているということまではわかりましたが、返金の時期などは明確にされていません。

9日、NHKニュースの報道によると、顧客資産のうち日本円の出金に関してはシステムの安全性が確認されたとし、2月13日に出金を再開する方針とされています。

日本円以外の仮想通貨の出金再開時期は9日現在、明らかになっておらず、流出したXEMの補償、また売買取引の再開についても現状不明です。

一刻も早い事態の改善、収拾とともに、今後の対応について、金融庁、およびコインチェックからの正式な発表が待たれます。

参考:NHKニュース , ロイター , 共同通信 , NHKニュース