インターネットの誕生は物理的な距離と関係なく様々なサービスやコミュニティの形成を可能にしてきましたが、仮想通貨の誕生もまた、さまざまな技術・法的な問題点を解決すると同時に、新たなサービスを作り出していく大きな可能性を秘めています。

今日では、国境を越えてお金が運用される「金融のグローバル化」が進んでおり、世界各国のお金がやり取りされる「国際金融市場」が形成されています。しかし、国際的な決済は費用がかさみ、多くの労力を要すると同時に、エラーが生じる場合があります。他国間の異なる通貨における取引は、複数の仲介者を必要とし、完了までに何日も、あるいは何週間もかかる場合があるのが現状です。

先月、サンフランシスコで開催された「ブロックチェーンカンファレンス(Blockchain Connect Conference)」では、リップル社のCEOであるブラッド・ガーリングハウス氏が参加し、BTC MediaのCEOであるデイビッド・ベイリー氏と“グローバル決済のブロックチェーン・ソリューション”について議論を交わしました。

その中で、以下のような例え話を挙げて現在のグローバル決済の現状を語り、さらにリップルが掲げる今後のビジョンについても説明しました。

「例えば、あなたと私が今日、ロンドンへ1万ポンド送金したいと思ったら、スピードの面で最も効率的なのは、今すぐ空港への航空券を購入し、そこへ飛んでいくことです。」

「宇宙ステーションから動画を流すことができるほどの技術がある現代において、これほどおかしなことはない。A地点からB地点へ自分のお金を移動することができないのだから。リップルのビジョンは、今ある技術を活用して、取引や支払いの仕組みをいかに劇的に加速させるかです。」

さらに、ガーリングハウス氏はリップルが提唱しているILP(インターレジャープロトコル)についても説明しました。異なる台帳(レジャー)同士をつなぎ、それぞれのネットワークで高速なやり取りを実現することを目指しているILPは、全ての台帳を一つにするという業界の考え方に反していると言います。

「ビットコイン、ブロックチェーンを含め、全てが一つの台帳になるだろう、と言う人がいるが、我々はそうは思いません。」

「代わりに、台帳をリアルタイムで相互接続し、その相互運用性について我々は考えています。シスコがTCP・IPへのルーターを構築しているなら、リップルの技術はルーターの構築とILPへの接続となります。」

ガーリングハウス氏が言うように、将来的に全ての取引台帳が結びつくことになれば、複数の金融機関やブロックチェーンにまたがる取引を時間や費用をかけずに摩擦なく取引を行うことができるようになるでしょう。

異なる銀行や国での決済、異なる通貨間での決済が抱える手間やコストの問題の解決にも繋がるでしょうし、仮想通貨という新たなアセット・技術が誕生したことで異なる通貨間の決済が今後ますます増えていくことを考えると、ILPによって解決できる問題は少なくありません。

最近、“世界の有力銀行はXRPやその他のデジタルアセットを使用したいとは思っていない”といった内容の報道がありましたが、ガーリングハウス氏はこれについて以下のように語りました。

「20年ほど前、私がDialPadというVoIP(ボイス・オーバー・インターネット・プロトコル)会社のCEOをやっていた頃の話ですが、私はある日、AT&TのCEOであるランドール・ステファンソン氏とともに部屋で一緒に座っていました。」

「彼はAT&Tは『音声では決してIPを使用しない』と言っていました。しかしどうだろう、今AT&Tのネットワーク全体はIPなんです。だから、銀行が今仮想通貨を使うつもりはないと言っているのを聞くと、私はランドールが『IPを使用しない』と言っていたことを思い出すよ。銀行はコストを削減して実際の問題を解決するなら、より良いサービスを顧客に提供するのに役立つシステムを使用するでしょう。」

20年以上もシリコンバレーで経営に携わってきた経験を持つガーリングハウス氏の言葉は、やはり説得力があります。銀行を含め、経済界がもはや仮想通貨を無視できなくなっているのは事実。金融とITが融合した“フィンテック”は今や昨今の銀行業界を語るのに欠かせないキーワードのひとつです。

“仮想通貨”というと、その価格ばかりがフォーカスされますが、このように技術面でも関心が高まっています。今後の仮想通貨・ブロックチェーン技術の発展とリップル社の事業展開に期待の声が寄せられています。

参考:Ripple