日銀の黒田東彦総裁が参議院財政金融委員会での質問に対し、「現時点で中央銀行としてデジタル通貨を発行する予定はないが、将来的に必要性が高まることに備えて調査を行なっている」と発言した。

また、ステーブルコインの存在に対し、グローバル化がさらに進むことで金融政策に影響を与える懸念があると指摘している。

それを踏まえ、多くの顧客を有する企業がデジタル通貨を国際的に発行した場合、金融政策と金融システムの安定性に重大な影響を及ぼす可能性があるとして、今後も注意深く見ていくとした。

国が発行するデジタル通貨(CBDC)については、ノルウェーやスウェーデンの中央銀行が既存の通貨と異なるデジタル通貨の発行を検討しているほか、中国がブロックチェーン国策の一環でデジタル人民元(DCEP)の発行を予定している。

また、カンボジア国立銀行(中央銀行)が、日本のブロックチェーン企業「ソラミツ」と開発連携を行い、中央銀行デジタル通貨「バコン」を2020年早期にも正式に導入する見込みであることが明らかにしている。

この件について日銀の対応や考え方についても問われ、「他国の通貨政策について言及するのは適当ではない」とし、「スウェーデン中央銀行など海外の当局・中央銀行とよく情報交換をし、影響を注視している」と述べた。

さらに黒田総裁は「フィンテック企業、銀行など民間部門が発行するデジタルマネーもある。そうした民間マネーの利用を促進していくことで、中央銀行デジタル通貨がめざす決済機能の向上の実現を達成していくことが重要」と述べ、日銀自らがデジタル通貨を発行するのではなく、民間企業による各種デジタル通貨・マネーの発行・利用を促進していく考えを示した。

円建てのステーブルコインについては、インターネット企業大手のGMOが「GYEN」の発行をを間もなく予定している。GMO側はとりあえず海外の取引所にて導入していくとしているが、発行することで為替相場にどのような影響を及ぼすのか日銀側としてはまずはその動向を注視していきたいのだろう。

また、ステーブルコインについては麻生太郎財務相が送金手数料がかからないという観点から「金融分野におけるイノベーションになる可能性がある」と発言していることもあり、政府側と日銀側との双方の立場上、今後どのようにデジタル通貨に対応すべきなのか、話し合いの場が増えていくことが予想される。

参考:参議院インターネット審議中継