「アクア・ブルー」や「沈黙のステルス」などを手掛けるギリシャの映画監督アルキ・デイビット氏が、大麻の為のSWXコインを発行する事を発表した。SWXコインは、Tetherが米ドルにペッグされているように、大麻の取引価格に裏打ちされた特殊なステーブルコインと言え、世界中の合法な大麻取引を容易にするために設立されたと説明されている。

日本における大麻の取り扱いは歴史的な理由から使用に罰則規定はなく所持が違法と少々歪なものだが、実際は所持せずに使用することは現実的に困難なことから大麻=違法薬物という印象も根強いことだろう。しかしながら現在大麻の立ち位置は世界的に非常にゆらいできており、限定的に合法化していく地域も徐々に増えてきている。その一方で、2013年に合法化された南米ウルグアイでは合法に大麻が手に入るにも関わらず今でも闇のマーケットが健在であるという。

原因としては、大麻を禁止している多くの地域との国際的な交流のため、対外的な体裁を重視するウルグアイ国内の銀行が大麻を取り扱う薬局との取引を嫌い、結果として大麻を表立って取りあつかうだけの資金的体力のある薬局が需要に足らず、正規ルートで十分な供給ができないため未だに地下の売人のマーケットが駆逐できていないという。

銀行の口座で資金移動が出来ないのであればということで、大麻向けの仮想通貨が作られることとなったようだ。他の例としてはウォレット開発会社のVegaWalletが仮想通貨のDashを使った合法大麻のためのサービスもある。この場合懸念されるのが、この方法で本当に違法大麻を退けることが出来るのか。違法大麻の取引に転用される恐れはないかだろう。

実際に、仮想通貨が広く知れ渡るようになった一因に裏マーケットでの活用、マネーロンダリングなどに着目された経緯があるのも確かである。今でも違法取引は半年で5億ドル超となったという報道もあり、ダークウェブでの取引は仮想通貨に移りつつあることは有識者から報告されている。

一方で仮想通貨取引所コインコーナーのダニー・スコットCEOは「多くの仮想通貨はブロックチェーンが使われ、やり取りが永久に記録されるので、犯罪証拠が残る」と言う趣旨の発言をしており、履歴の残ることを嫌う犯罪者にとって仮想通貨が理想的なものではないことを指摘している。

またChainalysisを立ち上げたジョナサン・レビンも仮想通貨が盗まれた場所を特定した事があると発言していたり、ユーロポール(欧州刑事警察機構)が、仮想通貨から犯罪を突き止める訓練プログラムを設計したと言われている。更に、日本では仮想通貨を取り扱う企業を立ち上げる際は金融庁への登録が必要であり、仮想通貨を現実の通貨へと換金するには個人の認証が求められ、マネーロンダリングへの対策は強く施されている。

国境を越えた送金手段を期待され開発されている仮想通貨であるため、限定的な地域でのみ堅固な運用をされていても仕方のない面もあるが、未来への大いなる希望でもある。

地域により取り扱い方が大きく異なるという意味では親和性の高い存在と言える大麻と仮想通貨。それだけに、組み合わせ方を間違えれば大きく間違えた方へ振り切れる可能性もあるが、大麻にはいわゆるドラッグと言われるような嗜好品として以外にも医療用に重宝される側面もある。

それぞれ適切なテクノロジーが正しく運用され、必要な地域、必要な方のもとへ不足なく届けられるようになることを願いたい。