このところ目にしない日がないほど、ICOに関するニュースが飛び交っている。国内で欠かせない話題といえば直近では、テックビューロ社によるCOMSA(CMS)が今年10月にもICOを実施するということでも騒然となっている。このプロジェクトが成功すれば、今後の日本国内でもスタートアップ企業が積極的な姿勢になれるし、出資する側の理解も得られるいいきっかけになりそうだ。逆にCOMSAのICOが失敗するようであれば、もう日本での普及は受け入れられないと思ってもいいのではないだろうか。

ICOは資金調達が目的なので、スタートアップ側のプロジェクトの内容や、発行するトークンに有用性や将来性を感じられるものであれば、出資者側ともお互いにwin-winの関係が築ける仕組みとなっている。仮想通貨のメッカとも呼ばれる名古屋のベルギービール専門店「サンタルヌー」では、東京進出の費用捻出のためにICOを行ったことでも有名だ。飲食店でのICOというのは世界的に見ても珍しい例ではないだろうか。

このようにメリットばかり挙げるといいこと尽くしのようにも思えるが、このシステムを悪用した詐欺まがいの事例もしばしば見受けられる。主にセミナーや知人からの紹介などでプレセールや事前購入を装い、巧みに近づく例も多いようだ。こういったことから国内でのICOというと、あまり良い印象を持たない方も少なくない。

悪質なものの中には、国家プロジェクトを騙ったり、芸能人など有名人の名前を使ってウソをつき、安心感を買おうとするものも見られるので、聞いたことのある有名人の名前が挙げられていても、鵜呑みにするのは危ないかもしれない。中には「必ず儲かる」「来年には◯倍になる」「これは固い案件だ」などと平気でウソを言ったりするので注意したい。

基本的にICOを行う際、事業内容やプロジェクトを説明するのにホワイトペーパー(目論見書)を明記するが、このようなものがなく、セミナーで一方的に説明され直接、もしくは銀行口座などに振込での入金を求めるケースは疑ったほうがいいかもしれない。当然、計画中のプロジェクトに出資をするというのは、リスクが付き物ではあるが、大事な資金を出す限りは少しでもリスクを抑えたい。

ホワイトペーパーだけでなく、その会社やプロジェクトに関わっている人やその背景など、出来る限りの情報収集は欠かせないだろう。また、ICOについて説明する際、よく引き合いに出されるのが株式で行われるIPOがある。株式をしている方はここの違いから入ったほうが分かりやすいかもしれない。

IPO(イニシャル・パブリック・オファリング)の場合は未上場企業が株式公開前に、資金調達のために自社株を販売するもので俗に未公開株とも呼ばれている。IPOでは、株式の保有分によりその企業の経営面などに、アピールをすることができるが、ICOではそのようなものはない。

簡単な例として、その会社の株式の3分の2以上を保有していれば支配権などを得ることができるが、ICOではいくらトークンを保有しても該当の会社や、そのプロジェクトへの権限は与えられない。もちろん保有するトークンに対しての配当などもない。あくまでプロジェクトに出資するのみで、先行投資という点で、後にトークンに価値が付くか。その企業やプロジェクトを長期的に応援することができるか、といった視点で見ていく必要がある。

海外では頻繁にICOが行われ、米証券取引委員会(SEC)により、一部規制や投資家に対するICOの理解を求めるアナウンスがあったが、日本国内では改正資金決済法で法整備が進んでいるとは言え、まだ法規制は完全に整っているわけではない。今後、国内でも企業のICOが増加していく可能性も高まっている中、出資する側は真贋見極める必要があるかもしれない。