ウェブサイトを訪れたユーザーのマシンパワーを使いマイニングをさせ、サイト収益とするサービス「Coinhive」の設置を巡って2018年より争っていた事件について、2月7日に東京高等裁判所(栃木力裁判長)にて控訴審判決が言い渡され、一審・横浜地裁の無罪判決を破棄し、罰金10万円の逆転有罪とした。弁護側は上告する方針を明らかとしている。
Coinhiveに関しては当サイトでも過去に幾度か報じているように、Coinhiveプログラムが「ユーザーの意思に反して」「ユーザーのマシン・電力を使用」する点に対して争点が置かれていた。ネットではユーザーの意思に反して使用されるのならば有罪ではないかと言った声も多く聞こえるが、Coinhiveの目的がマイニングといった収益に直結するためわかりやすかっただけで、ユーザートラッキングのスクリプトなども一般ユーザーの認知しないレベルで動作しているウェブサイトは数多く含まれ、そういった広告分野での資金の流入があってこそ今日のウェブの隆盛があるともいえるため、一概にバックグラウンドで走っているプログラムを規制するかに見える今回の裁判については仮想通貨関係以外のウェブ開発分野からも大きな注目を集めていた。
判決では「このようなプログラムの使用を一般ユーザーとして想定される者が許容しないことは明らかといえる」といった発言がされているように、反意図性に対して犯意が認められての逆転有罪に見られる。しかし、反意図性の凡例を根拠にするならばユーザートラッキングスクリプトを走らせるウェブサイトを軒並み検挙でもしないと整合性が取れないことになり、そうでないならば法の下の平等は損なわれ、単なる弱い者いじめと警察、検察の意地でしかないだろう。
中国、シリコンバレーに大きく水を開けられた日本の開発力だが、このような判決が起これば“先進技術の研究・開発は損”となるのは明らかであり、今後IT先進国に返り咲くことは不可能だろう。技術に無関心であることは仕方のないことかもしれないが、Coinhiveのようなビジネスモデルを認めるか認めないか、判決文の内容次第ではそれとは別のレイヤーの問題となってしまうことを冷静に判断いただきたい。
参考:弁護士ドットコム