韓国の仮想通貨取引所「コインワン」が、個人顧客(以下A氏)との裁判において補償金を支払うように命じられたことが判明した。

コインワンは韓国内で第三位、世界での取引量で見ても第84位と好調を見せているが、昨年設立し一年を待たずして閉鎖を発表したことも記憶に新しいマルタに拠点を置いていた取引所のCGEXの運営元としても知られている。

韓国の政府機関である科学技術情報通信部と韓国インターネット振興院の調査によれば、多くの取引所がセキュリティの審査基準に満たないと言われるなかで、基準に達した数少ない取引所の一つがコインワンだ。

A氏は2018年12月23日に、それまでコインワンの口座に所有していた520万円相当の仮想通貨の大半を何者かに出金され、おそらく出金の最低単位に満たなかったと思われる金額だけが残された。A氏側の主張によると、出金申請に使用されたIPアドレスはオランダのものであるとし、外国からの多額の送金依頼をコインワンが調査も拒否もせずそのまま認めている点に争点をおいていた。

A氏の訴えでは損害賠償は盗まれた約520万円相当を補償する金額だったが、ソウル南部地裁はコインワンに非を認めるものの、主張された損害賠償額よりも少ない金額に留まった。A氏の主張に対してコインワン側は、海外IPアドレスをブロックする義務はなく、A氏の言う「多額の送金」にあたる2000万ウォン(約180万円)の閾値もまた、政府によるマネーロンダリング防止のガイドラインに過ぎず、一般顧客であるA氏の口座へ厳格に適用すべきとは言い難いと反論した。

裁判所の判断としては顧客保護の姿勢は見せつつも、コインワン側の言い分を多く受け入れたことで、大幅に減額された損害賠償金をコインワンに命じるという点に落ち着いたのだろう。

今後仮想通貨取引所から法定通貨への送金のガイドラインは世界的に厳格化していくことは明白である。送金トラブルといえば思い浮かぶのが振り込め詐欺であり、日本の銀行においても振り込め詐欺対策のためにATMでのキャッシュカードによる振り込みの制限などが課せられているが、韓国内においても振り込め詐欺は行われている。

今回の事件がきっかけとなるかは未知数だが、今後の動向によってはセキュリティ対策で取引所が訴えられる事例も増えてくるかもしれない。いずれにせよ全額補償が確実なものではない限りはコールドウォレットの利用など、出来る限りの自衛は必要だ。

参考:coindesk