英国最大の銀行であるバークレイズは、ブロックチェーン技術を使用して仮想通貨の匿名性と、伝統的な金融システム、そしてKYC(顧客確認)・AML(アンチマネーロンダリング)制度が組み合わさった3つのシステムを米国特許商標庁に申請していると、18日に米国の大手仮想通貨メディアのクリプトカレンシーニュース(CCN)が報じた。

1つ目の特許では、ネットワーク上の特定のユーザーがブロックチェーンネットワーク上のデジタル通貨単位を作成、または破壊することを可能にするシステムを提案した。そのようなユーザー(おそらく中央銀行や他の金融機関)は、特別な“通貨発行者の秘密鍵”を使用して通貨の通貨供給を変更することができ、“通貨破壊者の秘密鍵”を使用すればネットワークのパブリックな元帳に新しい通貨単位を追加することができ、特定の通貨単位を元帳から削除することも可能になる。

特許の作成者は、このようなシステムを使用して銀行やその他の通貨換算サービスに資金を入金し、それらをデジタル通貨に変換した後に元帳から引き出すことが出来ると説明した。法定通貨にペッグされたステーブルコインが、ブロックチェーンを使ったネットワークの基盤となるとバークレイズは見ているようだ。

「デジタル通貨の単位は、いかなる形式の通貨単位にも設定することができる(米ドル、ユーロ、スターリング・ポンドなどの金額換算単位に設定することが可能)。これは、デジタル通貨が設定されている決済通貨に対して価値が変動しないという利点がある。」

特許作者はそう語っている。また、破壊する機能は、元帳内の古いブロックを参照する未使用の資金を新しいブロックの出力と置き換えることで、元のブロックを破棄してノードを操作するために必要な記憶領域の量を削減することにも使うことができる。

このツールを使用すれば、不正や犯罪行為に関連した資金を押収することができる。しかし、この機能はマネーロンダリング防止規制の遵守を懸念している機関にとっては好都合なことだが、消費者の間で懸念を抱かせることにもなるだろう。

例えば、独立した仲裁機関の勧告に基づいて口座の凍結を命令されたEOSのブロック・プロデューサー(BP)をめぐる論争の例が分かりやすいだろう。BPとは、トランザクションを検証、またはチェーン内での作業を担当する機関(マイナーのようなもの)であり、この機能はユーザーが盗んだ資金を回収することでよりユーザーフレンドリにする手段として賞賛されていた。

しかし、EOSチームとBPの共謀を疑う声や、アカウントを凍結させるという“罰則”があるというアイデアについて異論を唱える者も少なくない。EOSのリーダーであるDan Larimer氏ですらも、BPのアカウントを凍結する権限を減らすようEOS憲法を変更するよう提案しているのが現状だ。

他の2つの特許は、ブロックチェーンネットワークを使用して、身元確認のセキュリティと機密性の高い情報を含むその他のプロセスを強化する方法を概説している。このシステムの下では、1つまたは複数の第三者が、ネットワーク上の別のユーザー(例えば、仮想通貨のウォレット所有者)の身元または評判を個別にまたは集合的に保証することができる。

典型的な例は、18歳など特定の年齢以上のユーザーへのアクセスを制限するために法律で要求されるサービスだ。このようにサービスごとに年齢確認を行うことは時間がかかるだけでなく、機密性の高い個人情報はハッカーに狙われやすくもなってしまう。

バークレイズの提案するシステムでは、ユーザーはネットワーク上で取引を行う際に一定のクレームを行うことができる機能がある。例えば、「彼または彼女は年齢制限がある商品を購入するのに十分な年齢である」、というクレームを行うことができるのだ。

もしユーザーがすでに第三者(金融機関または他の販売業者など)によって年齢確認が行われている場合、売り手はブロックチェーンの「claims tree(クレームツリー)」を通じてこれを確認することが出来るので、確認クレームを手動で審査する必要がなくなる。また、データは機密性が高いため、検証されたクレームを暗号化し、見えにくくすることも可能だ。さらに、特定の人達だけがネットワークを介してユーザー情報にアクセスできるようにすることもできる。

銀行は、このようなシステムは無数のクレームの整合性を検証することができると考えている。例えば、運転免許証からIoT(Internet of Things:モノのインターネット)のデバイスの所有者への信用力、そしてデバイスのデジタル通貨での取引承認に至るまで様々である。

バークレイズは、このシステムは消費者だけでなく経済サプライチェーン全体の関係者にとっても利益をもたらすと主張している。基本的なレベルでは、銀行はKYC/AMLへの準拠にかかる時間を短縮し、諸経費を削減し、社内業務を合理化することが出来る。個々の機関が保有する個人情報の量ははるかに少なくなるため、データセキュリティを向上させることも可能だ。

「これによりセキュリティが向上し、リスクをより正確に判断することが出来る。また、小売業やその他の取引において、現在彼らが果たすことができる運用上の役割のための財務的機会を生むことが出来る。特に銀行は処理システム(例えばコンピュータ処理)の大幅な削減と、記録システムの維持、そして規制当局やその他の人々に必要な精査を提供するための財務コストの恩恵を受ける可能性がある。」

特許作者たちはこう綴った。細部にはまだ課題が残されているが、このシステムが日の目を見るかどうかは、時間が教えてくれるだろう。

参考:CCN