破竹の勢いの仮想通貨業界。とどまる所を知らないその成長力は、今や地球の“エネルギー問題”にまで発展してきております。

今、ビットコインを生成するために毎日膨大な電力が使われております。このビットコインの生成はマイニング(採掘)と呼ばれており、マイニングには膨大な計算能力・コンピューターパワーとそれを動かす電力が必要となってきます。

イギリスのエネルギー価格比較プラットフォームであるPower Compareは、主要な仮想通貨のマイニングにヨーロッパの20以上の各国々の消費電力よりも多くの電力を消費していると発表しました。

この電力は世界中で必要とされている電力の0.13%に相当するとも述べており、今なお消費電力量は増え続けているとしています。国レベルの電力を貪り食う仮想通貨は、今後エネルギー市場に大きな影響を与えていくとも見られており、とくに地球温暖化へ繋がる問題として、すでに多くの人達の間で議論がされています。

ビットコインのマイニングの大半は、平均気温の低いアイルランドや、中国を中心に行われています。これはイギリスやアメリカなどの先進国よりも、電気代が非常に安いからです。中国政府による規制強化で今後は分散していく可能性もありますが、実際の調査では中国でのマイニングが全体の80%以上を占めているとされております。

水力や太陽光など再生可能エネルギーによるものもありますが、中国の電力供給の多くはCO2(二酸化炭素)を排出する化石燃料による発電のため、電力消費量が増えればCO2の排出量が増え、環境破壊を促進させる可能性があります。

地球環境の保護に力を入れている人たちや、仮想通貨を「ただのバブル経済にすぎない」と見ている人たちにとっては、地球温暖化を促進させる仮想通貨の価値はそこまで高いものではないでしょう。しかし、仮想通貨の誕生が経済発展に大きく貢献したのも事実。例えば、ジンバブエやアルゼンチンといったハイパーインフレーションに陥ったことがあるような国々では、現地の通貨よりもビットコインの方が安全に利用することができる場合もありますし、諸外国では仮想通貨の誕生によってたくさんの新たな投資、雇用、新興企業が生まれました。

ビットコイン利用者を含む多くの人達は、国や政府機関などの中央管理者を持たず、国境を超えて誰もが自由に使うことができる民主主義的なお金が誕生したこと、そしてその価値を高く評価しております。しかし、全員が環境問題を無視しているというわけではなく、大量の電力消費について懸念する人も多く存在します。

イーサリアムを生んだ若き天才ヴィタリック・ブテリン氏もそのうちの1人で、仮想通貨のエネルギー問題について以下のように述べております。

「私の世界への主な貢献が地球温暖化の問題となるのは、非常に悲しい。」

おおよそ、キプロス共和国で1日に消費する電力がマイニングに使われると言われているイーサリアムですが、その創設者であるブテリン氏は電気使用の地球温暖化に及ぼす影響を懸念しており、現在はよりエネルギー効率の高いトークンの作成方法を模索しているとのことです。

ビットコイン後に作成されたリップル(XRP)とステラ(XLM)という仮想通貨は、電気需要の高いマイニングを必要としないように設計されていますし、電力使用に対する懸念は業界ではまだ多くの人々に影響を与えています。

環境破壊を懸念する国々は多く、特に環境問題に敏感なヨーロッパは仮想通貨マイニングに対して、規制や制限等の圧力が強まっていく可能性があります。現在、すでにエネルギー・環境問題の解決には政治経済の仕組みと強い力が必要不可欠となっており、今後もその度合いは更に強まっていくと考えられるでしょう。環境技術に強いとされる日本がこの問題にどのように関わっていくかも、今後益々注目されていくでしょう。

参考:The New York Times