本日4日、中国人民銀行(PBoC)はICO(イニシャル・コイン・オファリング:仮想通貨の新規発行による資金調達)を違法と位置づけ、これに関する資金調達を禁止することを発表した。
ICOは当局の管轄外で、企業や個人などが独自の仮想通貨・デジタルトークンを発行し、素早く多額の資金調達をすることが可能だ。中国のみならず、国際的にも企業など仮想通貨の発行者にとって資金調達の場として活用されてきた。
中国は以前からICOに対しての規制を強めていく姿勢を示していたが、本日の発表ではより具体的な内容となっており、中国人民銀行や証券業および銀行業の規制当局、その他、政府機関が出した共同声明によると、ICOによって資金調達を行った企業・個人は調達した資金を返済するべきだと指し示した。
しかし、その調達した資金をどの様に返済するかまでは、明らかにしていないため、実際にトークンを発行した企業や個人の采配に係るものか、もしくは、適宜指導が入るものかまでは現状では不透明である。
おそらくは、証券のようなものと見なされるトークンに対しての内容で、米国SECや、シンガポールMASのような規制と同等の姿勢と考えられるが、これより厳しくすべてのICOに対して規制をかけることも可能性としてはあり得る。また、規制対象のICOはビットコインやイーサリアムのようなブロックチェーン技術に基づいた仮想通貨が含まれるという。
ICOはその特性から、IPO(新規公開株式の販売)としばしば比較されるが、内面的には大きく性質が異なり、出資者側が株式を取得するIPOに対し、ICOにはその裏付けとなるものがない。そのため、発行する企業やそのネットワーク特有の仮想通貨やトークンが実用的であると証明し、流動性が高いと認められる場合にのみ価値があるとしている。
確かに、ICO後に取引所で上場されても取引が極端に少ないものもしばしば見られる。このようなものは単に資金調達のみを目的としており、その後のプロジェクトがおざなりというケースもあるため、投資家保護として見れば詐欺的なものを排除できるため、より健全な投資の機会を与えられるという考え方もできる。
また、KeneticCapital(ケネティックキャピタル)のJehan Chu(ジェハン・チュウ)氏は、中国は将来的には国が承認したプラットフォーム上でのみのトークンの販売を許可すると見ており、今後はプロジェクトを個別に精査していく可能性もあると語った。政治的な内容についてはここでは言及しないが、先日、中国人民銀行率いるチームが、サンフランシスコにあるRipple(リップル)社と大手仮想通貨取引所のCoinbaseを訪問したことも記憶に新しい。
このような中で、ICOに対する規制を強めたというのは、中国の仮想通貨に対しての考え方が技術面に向いており、投資対象としてだけの仮想通貨という立ち位置から一歩進んだという前向きな捉え方もできないだろうか。
今回の中国人民銀行のICO規制の発表からさらに、相場を下げている仮想通貨市場。ICOと仮想通貨投資を直接結びつけるのは安易だが、今回の件でしばらくは中国からの資金流入が減少するとの予測もされている。相場動向だけでなく各国の法規制も含め、今後の展開も慎重に追っていきたい。
参考:中国人民銀行