シンガポールで開催されたFintech Festival(フィンテックフェスティバル)の中で、B2B(Business to Business:企業間)決済にブロックチェーンを活用し、既存のシステムを変革、効率化しようとするVisaの取り組みについて、新たな発表がされました。

Visaは2016年に ブロックチェーン企業Chain社のシステムを活用するとして、「Visa B2B Connect」という名称でこのプロジェクトを発表しており、2018年中頃には商用化に先駆けて銀行間のテスト取引の処理が可能なプラットフォームに変更するために、世界中の金融機関と提携しています。

その目的とアプローチは、マスターカードやアメックスの取り組みに近いものがあると見られます。マスターカード、アメックスともに、企業顧客を対象に国際間での決済取引を目的としてブロックチェーンを活用していくと発表しています。

先日のアメックスの発表ではRippleのシステムを採用し、米国・英国間での送金に利用されるということでも話題になりました。また、マスターカードブロックチェーンではマスターカードの機能のうち「Mastercard Send」でGoogle社やバークシャー・ハサウェイといった大手企業が利用していることなど、さらなる展開も期待されています。

Commerce Bankの商業支払い、および製品担当部長である、Chris Wiedenmann氏は、次のように述べています。

「世界規模の相互接続性の世界では、すべての企業にとって支払いを迅速かつ透明に行う能力が重要です。Commerce Bankは、お客様のために新しく革新的なソリューションを提供することに専念しており、Visaとの強力な関係を通じて、Visa B2B Connectのパイロットに参加できることを嬉しく思っています。」

現段階ではVisaのパートナーとして、米Commerce Bank、韓国の新韓銀行、Union Bank of the Philippines、シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行が参加します。

現状では、ヨーロッパのパートナーはいませんが、Visaは銀行間のテスト取引を行い始めれば、2018年のB2B Connectの商用利用開始までには、他のパートナーの参加も見込めるとしています。

Visaは、法人顧客の代わりに銀行間の高付加価値な国際送金サービスを改善するための新しい取引プラットフォームを設計しました。Visaがエンドツーエンドで管理するB2B Connectは、Visaの標準事務に従って決済を管理する一貫したプロセスを促進することを目的としています。

「現在、国境を越えた送金を行うには、金融機関や法人顧客に対して、しばしば煩雑で時間がかかり、摩擦に満ちたプロセスを伴うことがあります。Visa B2B Connectは、ブロックチェーンアーキテクチャに基づいた技術を使用して、Visaのネットワーク経由で取引先銀行から直接受信者銀行に取引を送信することで、このプロセスを簡素化します。」

B2B Connectの重要な部分は、その「APIファースト」戦略です。Visaデベロッパープラットフォームに公開されたB2B Connect APIを使用して、よりスマートな国境を越えたB2B決済フローを実現するために、B2B Connectを提供してグローバルな開発者コミュニティを構築するとしています。

マスターカード、アメックス、Visaはすべてブロックチェーンベースのクロスボーダー決済から新しいB2Bビジネスを模索しています。これにより、必然的に企業の選択肢が生まれます。従来の国境を越えた送金システム(例えばSWIFTや一部の中央銀行など)には多くの選択肢があり、競合は避けられないようです。

日進月歩、加速するブロックチェーン技術ですが、仮想通貨や投資といった側面以外でも人々にとって有益な活用が進められ、ますますの技術革新に期待が高まります。

参考:Visa , Enterprise Times