スイスの大手金融持株会社であるUBSが先週発表したレポートの中で、仮想通貨は投機的でバブルだと指摘しました。

このレポートでは大きく3つに分けて仮想通貨に対しての懸念とブロックチェーン技術の有用性を以下のように示しました。

1. 現在の仮想通貨の上昇は投機的なバブル

「2008年以降、仮想通貨は注目を集めています。今日ではその種類は1,000以上にも増加し、市場の時価総額はIBMよりも高くなっています。しかし、これが主流の通貨として利用されるかどうかは疑わしいです。ここ数ヶ月の仮想通貨の価格が急激に上昇しているのは投機的なバブルだと考えられます。」

仮想通貨と一括りにすれば、投機的なものが大多数を占めると考えられます。市場に出回れば、出資する根拠に乏しいものでも需給関係によって価格がつくのは確かなことで、ボラティリティ(価格変動率)が高いものほど儲かるという認識で売買取引を行うトレーダーも少なくありません。これが良いことであるか、悪いことであるかといった点は判断が難しいですが、メインストリームの通貨としての普及には時間がかかるというのは課題の一つかもしれません。

2. ブロックチェーン技術は経済的価値がある

「疑わしいところでは仮想通貨が主流として流通し、取引がされます。しかし、根幹技術であるブロックチェーン技術は、金融、製造、医療、公益事業に至るまでの産業に大きな影響を与える可能性があります。」

「ブロックチェーン技術は、2027年までに世界的に年間3,000億ドルから4,000億ドル(約34兆円から45兆円)の経済的価値を付加することができます。」

仮想通貨は、しばしば取引の不透明性などが議論され、KYC(顧客確認)やAML(マネーロンダリング対策)に多く比重が置かれます。これは、中央銀行を介さない取引を可能とする一方で、国で規制が追いつかないといった意見も散見されます。しかし、多くの政府やその機関、企業ではブロックチェーン技術については有用性を認め、活用に向けて実証実験を行っています。

3. ドットコムバブルとの類似

「ブロックチェーン技術に投資することは、90年代半ばのインターネットへの投資と似ています。ブロックチェーン技術は、この先10年で大きな混乱を招く可能性もあり、技術的な欠点を解決する必要がありますが、特定のアプリケーションが有用かつ有益であるかということは不明です。」

「これらの課題も抱えている一方、ブロックチェーン技術による長期的な機会を求めている投資家は、ソフトウェア、半導体、プラットフォームと金融、製造、医療、公益事業などの共有経済において早期的かつ成功裏に採用しています。」

UBSの会長である、アクセル・ヴェーバー氏は以前、通貨としての機能は価値の保存ができ、さらに取引通貨であることが前提だと話し、ビットコインなどは単なる取引通貨でしかないとの見解を示しましたが、やはり、ブロックチェーン技術には賞賛しています。

仮想通貨はバブルだとしていますが、一方的に否定をしているわけではなく、事実UBSはIBMと金融機関向けのブロックチェーン・プラットフォーム「Batavia」を共同開発していて、各国の銀行で金融取引をサポートするプロジェクトも進めています。

国内外問わず、こういった取り組みが多くの金融機関によって増えていくことにより、今後のブロックチェーン技術/DLT(分散型台帳技術)の発展にますます期待が高まります。

参考:UBS