オランダのアムステルダムに拠点を置く総合金融機関のINGグループは、国際銀行間通信協会(SWIFT)により開催されている国際会議Sibosにて、ブロックチェーンによる高度なプライバシー保護のソリューション「Zero-Knowledge Set Membership(ZKSM)」のリリースを発表した。

INGグループは、zero-knowledge proof(ゼロ知識証明)という手法を銀行間で使えるようにもっと単純化したzero-knowledge range proofという新しい手法をすでに適用しており、その技術の採用によりすでに多くの称賛を得ている。

暗号学においてゼロ知識証明とは、ある人が他の人に、自分の持っている命題が真であることを伝えるのに、真であること以外の何の知識も伝えることなく証明できるようなやりとりの手法のことを言う。

INGグループが採用しているzero-knowledge range proofという手法は「Range Proof(範囲証明)」を行っており、例えば、住宅ローン申請者などは給与が一定の範囲内に収まっていることを、正確な数字を明らかにすることなく証明することができる。こうした範囲証明の場合、通常のゼロ知識証明よりも計算的に簡単で、ブロックチェーン上ではより速く実行される。

今回リリースが発表されたZero-Knowledge Set Membership(ZKSM)は、ブロックチェーン上で設計されており、英数字データを特定のセット内で検証することを可能にするものだ。実際には、数値を超えて他のタイプのデータに移動することを意味する。例えば、寸法の証明や地理的位置付けなどがある。

例えば、KYC(顧客確認、Know Your Customerの略)を行う際、自分が住んでいる国を正確に開示せずに、グループ(EU市民など)に所属することを検証することができる。KYCとは新規に銀行口座を開設する際に銀行側から求められる「一連の書類手続」の事などを指す。データセット形成された個人情報がユーザーの居住国である場合、ユーザーは特定の地域の市民であることを証明することができるという。

INGが構築しているこの暗号化作業はすでにオープンソース化されており、プライバシー保護に定評のあるZcashの共同設立者の1人であるMITのMadars Virza氏による学術的な査読も受けている。

INGの企業向け金融イノベーション担当責任者であるAnnerie Vreugdenhil氏は、「我々の画期的なソリューションが、今すぐ実装およびテストできることを嬉しく思います。」と述べ、さらにZKSMをオープンソース化することについては「分散型台帳技術(DLT)を使用してデータとプライバシーを処理する方法を理解するための次のステップである。」と強調した。

参考:CoinDesk