国際通貨基金(IMF)は10日、マーシャル諸島が進めている米ドルと並行してデジタル通貨を第2の法定通貨として採用する計画は「マクロ経済と財務の健全性リスクを増大させ、米ドル先物取引銀行関係を失うリスクを高める」とし、マーシャル諸島に対して計画を取りやめるように勧告した。
マーシャル諸島共和国(RMI)は今年2月に、国家公認の仮想通貨「Sovereign(ソブリン)」を発行すると表明した。RMIはこれまで自国通貨として米ドルを用いてきたが、新たに政府発行の仮想通貨ソブリン(SOV)も並行して流通させる予定であることを発表した。
IMFによると、ソブリンを発行した場合、国内唯一の商業銀行であるマーシャル諸島銀行(BOMI)は、海外送金における中継銀行との契約などを含むコルレス銀行関係(correspondent banking relationship:CBR)を失うリスクがあると指摘した。以下はIMFの報告書の一部である。
「デジタル・マネーがマネー・ロンダリングやテロ資金(ML/FT)目的で悪用される可能性を考慮して、包括的なマネーロンダリング対策(AML/CFT)を効果的に実施せずにソブリンを発行すると、AMLからの厳格な調査やCFTの標準的な設定と潜在的な対策、CBRの即時の損失などにつながる可能性がある。」
ソブリンはICOで資金調達を行う予定としており、同諸島の53,000人の国民という比較的小規模なニーズに対応する独自仮想通貨を開発するほか、得た資金の一部は米国による過去の核実験の犠牲となった国民のための医療に向ける予定とされている。
RMIは、ソブリンの発行は米ドルに対する依存から離れる有効的な手法の1つとして検討してきた。同国は現在、冷戦期に列島で行われた数百件の米国の核爆弾実験の問題に悩まされており、米国からの独立を主張しようとしている。
同国のヒルダ・ハイネ大統領は2月に、この計画に対し「国民にとって歴史的な瞬間だ。ついに米ドルと共に我が国独自の通貨を発行し使用することになる。これは我が国の国家的な自由を明確にするためのさらなる一歩となる。」と述べている。
アンチ・マネー・ロンダリング(AML)やテロ対策(CFT)政策の策定や施行にはもちろんコストがかかるが、独自仮想通貨を法定通貨として採用した場合に得られる利益がそれらコストを上回ることができるかどうかなどの問題もあり、課題はまだまだ山積みだ。
参考:IMF