2010年から続くテックカンファレンス、TechCrunchの「Disrupt」が9月5日~7日にアメリカのサンフランシスコ州にて開催された。

初日には、リップル社のCEOであるBrad Garlinghouse氏と、TechCrunchの創業者でXRP Capital設立者のMichael Arrington氏が登壇し、TechCrunchの総合編集長でジャーナリストのMike Butcher氏が2人へインタビューする形で進められた。

■以下は当インタビューから一部抜粋したものである。

―Butcher氏

「一部のリバタリアン(自由主義の支持者)は、Garlinghouse氏のことを業界における悪魔・堕天使の“ルシファー”と呼んでいるが、何故だい?」

―Garlinghouse氏

「仮想通貨の業界には、多くの熱狂者がいる。ある意味宗教的であるとも言える。だからそう言う人がいるのも納得だ。

ただ、現代の支払いシステムに革命を起こすということは、現代にすでにあるインフラストラクチャーを全て捨て、まったく新しいモノに取り替えるということではないということを理解していただきたい。リップルはXRP Ledger上に様々なテクノロジーを作り、様々な機関や、銀行、時には政府といった機関がこうしたテクノロジーを活用し、そうした企業や機関がトランザクションの本質を劇的に加速させているのだ。

我々は、IoV(Internet of Value:価値のインターネット)を可能にするためには、価値の倉庫をつなげていかなければならない。価値の倉庫は、つまりは銀行と言えよう。」

―Butcher氏

「しかし、銀行は中央管理型だよね。リップルはノードも管理している。」

―Garlinghouse氏

「リップルはノードを管理はしているが、XRPをコントロールすることはできない。トランザクションはネットワークを構成するノードによって承認されることでレジャーに組み込まれており、リップルもその承認者(validator)の一部を管理しているが、それは全体のわずか7%程度だ。

ビットコインを得る方法としてマイニングがあるが、マイニングマシンの80%は中国で作られており、シェアトップ3のメーカーはいずれも中国企業である。このことを考えると、ビットコインの方がよっぽど中央管理型であると言える。XRPは完全に分散型だよ。」

―Butcher氏

「(Arrington氏に対して)なぜXRPを基金調達プログラムとして選んだのか?」

―Arrington氏

「まず一つは、彼(Garlinghouse)は仲良くしている友達だからね。TechCrunchはもともとAOLに売られ、その後Varizonによって買収された。BradはもともとAOLの重役だったし、必然的に仲良くなった。Bradがリップルに行ってから、彼にファンドの相談をしたんだ。その時、XRPをたくさん所有しているLP(リミテッド・パートナーシップ)を紹介してくれたんだ。

そして何より、XRPは資金を移動するにおいて素晴らしい通貨であるからだ。我々は資金を非常に素早く移動する必要があるし、世界中で投資を行っている。銀行を使うと1~2日かかるので、本当にまどろっこしい。我々が行った最初の取引は5千万ドル(約55億円)ほどだったが、XRPでの取引は3秒ほどで終わり、手数料も20~30セント(約20円)くらいだった。」

―Butcher氏

「(Garlinghouse氏に対し)SECがXRPを証券とみなしたらどうなる?」

―Garlinghouse氏

「まず、証券とは何か?ということを理解しておく必要があるが、証券は国や会社などの大きな財産や収益を受ける権利であると言っていい。XRPは証券かどうかについてだが、XRPという通貨とリップルという会社は全く別のものである。リップル社には株主はもちろんいるし、彼らはリップル社の株、つまりリップル社の財産や収益を受ける権利を持っている。

しかし、XRPを買っても、それはリップル社の財産や収益を受ける権利を得たということではない。それに、もし仮にリップル社が明日倒産したとしても、XRPは引き続き運用されていくだろう。

XRPが証券だとするなら、一体何の証券になるというのだろうか?中には“情報の対称性”を指摘している人が多いが、これは会社がその価格に大きな影響を与えるような情報を持っている場合、証券のような特徴を持っているのではないかという指摘だ。リップルもそうかもしれないが、皮肉なことに、XRPの価格に大きな影響を与える情報を持っているのは、米国の仮想通貨取引所であるコインベースだ。だとするなら、XRPはコインベースの証券なのか?それともリップルの証券なのか?

こうした事実を鑑みれば、XRPは証券でないことは明確だ。時間が経てば、それは理解されていくだろう。なので、私はXRPが証券かどうかということについては、さほど心配はしていない。」

―Butcher氏

「(Arrington氏に対し)あなたはイスラエル、シンガポール、ヨーロッパなどたくさん外国の国々に投資を行ってきたが、今後SECがそういったことに対しても規制をかけていく可能性はあるとお考えですか?」

―Arrington氏

「ああ、SECは本当にクソだ・・・。私は昨年、個人的にも多くの外国へ投資してきたのだが、SECはそんな私に対して勾引状を送ってきた。ようするに私が犯罪を犯したと告発してきたのだ。弁護士と話して彼らに失せてもらうのに30,000ドル(約330万円)くらいかかった。

SECは単独でアメリカのこの業界を潰しにかかってきている。もちろん我々はアメリカの企業にも投資しているが、投資の80~90%はアジア、ヨーロッパ、イスラエルの企業だ。

というのも、こうした国の規制体制は投資家たちが安心してブロックチェーン関連の企業の活動ができるものとなっている。アメリカではそれが出来ない。今、SECこそが一番責任を持って効果的に行動する必要があるのだ。もしSECの人間がカンファレンスの壇上に上がるとするなら、おそらく私は蹴って追い出すだろうが・・・。『次世代のテクノロジーの発展を台無しにしているにしていることを分かっているのか?何を考えているんだ?』と問いたい。」

―Garlinghouse氏

「このことについては、マイク(Arrington氏)は強い思い入れがあるよね(笑)私も同意するところもある。ただ、ICOには詐欺やスキャムがあったり、何十億ドルもの盗難被害があったのも事実。どちらかと言えば、SECがそうしたことを行っている人や団体を積極的に取り締まることをしていないことに対して私は驚いている。

国外で発展が進んでいくというリスクはあるし、それはマイクの意見に同意する。アメリカによる中央管理型のインターネットが経済に与える影響というのは、非常にアメリカにとってポジティブだったしね。」

参考:YAHOO! SPORTS