今月始めに発表された調査によると、現在利用可能なツールによるメタバースでのリモートワークは従業員の生産性が低下し、リモートワークに関連するフラストレーションが高まる可能性があるという。調査に参加した11%は大きな不快感を示したため、調査のための1日分のタスクも完了できなかった。

リモートワークにおける不完全な就業体験を補う技術としてメタバースが期待されている。従来の働き方では当たり前だった、すぐ側にいる人に気軽に問いかけるという行為がチャットツールなどでは心理的ハードルが高く、とくに雑談などは大幅に減少したことが広く伝えられている。

一方でVR空間を共有するメタバースでは、個々人がパーソナルスペースにいながら、メタバース上での“距離”の概念を実装することでより現実と近いコミュニケーションが取りやすくなった。

単純なグループ通話では複数人が同じ距離感覚を共有し、参加するすべての人に同じだけの音量で声を伝えてしまうため、同一グループ内で同時に発声するのはできるだけ1名ずつといった縛りもあり、不必要な発言を控えさせ、積極的な発言を萎縮させていた。

一方でメタバースでは遠くにいる人の声は小さく、近くにいる人の声に集中しやすくなるため、10人中2,3人だけに届けば良いというようなグループ全体からすれば関係は薄いものの、決して不必要ではない話題を発展させやすいというメリットが想像されている。

ただし、現時点のメタバースには手厳しい評価が多いようだ。

「VRでの1週間の作業の効果の定量化」と銘打たれたレポートによれば、通常の環境と一般的なメタバース設定で週40時間の作業を行う16人の異なる労働者のパフォーマンスを比較したところ、結果はほとんど否定的であり、今日のメタバースがまだ制限されすぎて作業ベースのアプリケーションをサポートできない可能性を示している。

メタバースは単なるチャットツールではなく、メタバース内のモニターに作業内容をアウトプットするような試みもされているが、通常の作業設定と比較して、42%の欲求不満、11%の不安、およびほぼ50%の眼精疲労を経験したことが報告されている。

また、現在のVRヘッドセットのフィードバックによる3D酔いなど、VRに関するいくつかの要因により1週間どころか1日分の作業も完了できなかった参加者が11%になった。

筆者個人的な体験としても、メタバース空間における可能性は将来的には感じつつも、現在のヘッドセットの解像度では未だVR内モニターに十分高精細な情報を表示させることは難しいと感じている。

メタバーステクノロジーはMeta社(旧Facebook)も全力で投資しているように、期待をかけている企業や個人も多い。アルゼンチンのソフトウェア企業Globantが行った最近の調査では調査対象の69%が、メタバース技術をリモートワークを実現する機能として重要な役割を果たすと答えている。