イランの仮想通貨メディアCoint.irのTelegramチャンネルによれば、イランが米国からの経済制裁を回避するために仮想通貨を使うことを考えているとイランのイスラム革命防衛隊の司令官であるサイード・ムハマンド将軍が表明したという。

イランに対する米国の経済制裁は1979年のイラン・イスラム革命を皮切りに現在まで断続的に続いており、様々な形で制裁措置を取られてきている。こういった経済制裁によってイランは外国からの投資や貿易を大幅に制限されることになり、これらの影響から法定通貨の価値が大幅に下落している。通貨下落のダメージを避けるためにビットコインを購入するイラン市民も出てきているという。

イランは昨年12月にもロウハニ大統領が「イスラム仮想通貨」を提唱している。ロウハニ大統領はその際、金融・貿易分野でイスラム教国家間の繋がりを深めて米ドル依存体制から脱却する必要があると主張している。さらにイスラム諸国のための特別な銀行・金融システムを創設し、地元通貨を使って貿易面で優遇し合う体制の構築を提唱した。

しかし、現実としてこういった提案に挙手する諸外国は少ないと見られる。イランに利する提案に賛同するということは米国の制裁対象となる恐れが大きいためだ。石油の世界の流通の約半数を担う中東諸国が実際に一同に立ち上がることができれば、対米で経済的に対等に話し合いの場所を築くことは可能かもしれないが、中東諸国も一枚岩ではなく親米から反米まで数多くの考え方がグラデーション状に広がっている。

欧州でも通貨ユーロによる経済圏を作り上げたが、英国の離脱や財政破綻国家の救済など亀裂は少なくない。ましてや制裁逃れが主目的と見られるイラン主導による連合形成は、イスラム教圏内といえど成功するか否か先行き不透明と言わざるを得ない。

また、イラン市民にとってもキャピタルフライトを目的とするのであれば現状のビットコインで充分現実的な手段と言えるため、イスラム仮想通貨を対米戦略の要とする可能性もあり、単なる政府主導仮想通貨の発行よりは大きなニュースと発展することも考えられそうだ。

参考:Coint(Telegram)