先ごろ報じられたカナダ最大手の暗号資産交換所QuadrigaCXのCEOがコールドウォレットの秘密鍵を独占したまま亡くなった事件において進展があった。

裁判所命令により任命された世界4大会計事務所の一つであるErnst&Young(EY)が監査を進めるうちに、債権者保護手続きにおいて3件の報告が発表された。

報告書によると主にBTCを格納するためのQuadrigaのコールドウォレット6つが特定された。

そのうちの5つは2018年4月以降入出金もなく残高もない状態、そして6つ目のものにおいても12月にBitcoinを受け取ってQuadrigaのホットウォレットへと転送するためだけに使用され、いずれも残高はない状態となっている。

その他にもQuadrigaによって使用された可能性のある3つのコールドウォレットアドレスを特定したが、こちらにもまた残高はなかった。

Quadrigaのユーザーアカウントにもメスが入り、通常とは異なるプロセスで作成されたと思われる14の取引に使用された痕跡のあるアカウントが発見された。現在EYはこれらのアカウントによる取引の詳細を調査中である。

コールドウォレットの預金がどこへ行ったのかの情報に対してQuadrigaの元顧客が10万ドルに及ぶ報酬を提供しているともいう。

元CEOの死亡自体に対して“容易く書類を偽造できる”旅先で亡くなったというゴシップめいた噂話もあるが、消失した金額と状況から意図的な詐取であることを疑われても仕方のない状況であるということだろう。

コールドウォレットの性質上、もし追跡に成功したとしてもコールドウォレットからの出金はほぼ不可能に近いが、もしも死亡前後に入出金のあったコールドウォレットが存在すれば事件は急展開を迎えることになる。

いずれにせよ強固なセキュリティと鍵の紛失リスクはトレードオフであることに変わりはない。通常の銀行においても、一夜にして金庫にアクセスできなくなるようなことはないにせよ倒産により預金者への債務を果たせなくなることはあるが、この場合は預金保険機構により保護されることが多い。

一方、暗号資産においては新たな枠組みとなるため既存の保護はされないが、今回のQuadrigaに学ぶことは各方面で多かったことと思われる。

BitGoはコールドウォレットを保護する1億ドルの保険契約を結んだことなども報じられた。

分散化された資産を守るために中央集権に頼ることになるのは本来の暗号資産の理想とは異なるものかもしれないが、セカンドベストとして今後は必要となる処置といえるだろう。

参考:BBC