元ゴールドマンサックスのパートナーで、7兆円ファンドでの運用経験もある米投資家のMike Novograt氏ほど仮想通貨を完全に受け入れている投資家は少ないだろう。
Novograt氏は2017年末、ビットコインは1万ドルにまで急騰し、イーサリアム(ETH)は終値で500ドルになると予測し、見事に予測を的中させたことでも有名だ。
その後Novograt氏は仮想通貨投資銀行のGalaxy Digital Holdings Ltd.を設立。しかし、今年1月に資金調達を開始していた頃、ビットコインの価格は急落し、以降も下落傾向が止まらない状況が続いた。2018年第3四半期には1億3,600万ドル(約154億円)の損失を出したとも報告されており、苦しい状況に追い込まれた。
そんなNovograt氏は今の仮想通貨業界や現状について何を思うのか?米ビジネス雑誌のBloomberg Businessweekは11日、Novograt氏へのインタビュー記事を公開した。以下はそのインタビューの一部である。
-仮想通貨のバブル時とバブル崩壊時の広告塔的存在となったNovograt氏ですが、どのようなお気持ちでしょうか?
最初はしばらくのあいだ、良い内容の連絡ばかりが来ていたよ。仮想通貨業界の“顔”が、今ではすっかり“醜い顔”だね。
-ビットコインがピークに達する3ヶ月前、仮想通貨は生涯の中で最大のバブルとなると教えてくれましたね。現代史における最悪の弱気市場になるという予測はできましたか?
「良い質問だね。私達は弱気市場だと思っていた。長期的には暗号は世界の本当の構造転換になると思っていたし、自分のポートフォリオをヘッジした。60%下落するまでは損をすることなく上手くやっていた。」
-下落傾向の途中で資金を稼ぐべきであった?
「間違いないね。私はビットコインは6200ドルでとどまると思っていた。実際、4ヶ月ほどとどまっていた。売りは終わったような気がしたよ。しかしその後、ビットコインキャッシュが再びハードフォークを決め、同時にSECがICOに対して“あなたの投資者は損害賠償であなたを訴えることができますよ”と言い出し、多くの人々を脅かせたよ。」
-通貨、金利、経済政策で取引をする「マクロトレーダー」としてキャリアを積んできたあなたが、ビットコインの初期の投資家になりましたが、それはどうして?
「私にとって、暗号は面白かった。なぜならマクロの人は複雑なものを単純にしようとするからね。マクロ市場にとってはステロイドのようなものだったよ。ここまでログチャート上で放物線を描く何かを見たことがなかったよ。ここまで狂ったチャートは信じられない、と思ったものだよ。」
-Reddit(「米国版2ちゃんねる」として知られる米最大の掲示板)や他の暗号コミュニティの多くは、まるで宗教のように扱います。ウォールストリートから来た人間であるあなたにとっては違いますか?
「その技術と動きを信じている間は、私は値がバカになれば売るだけだよ。私の多くの友人、知人は手放せないでいたよ。彼らは口を揃えて『これは世界を変えるんだ』と言っていたよ。革命は一夜にして起こるわけではない。私が通りを1人で歩いていると、周りの人が一緒に写真を撮ってくれと言い出し始めた時、『あれ、おかしいぞ。きっと天井が近いな』と思う。」
-しばらくの間、ICOは仮想通貨業界で最もホットな分野でしたが、詐欺の温床でもありました。彼らはまた戻ってくるでしょうか?
「ICO市場は今はかなり死んでいる。詐欺が多かったし、誇大宣伝がたくさんあり、人々は多くのお金を失った。SECがブレーキを踏んだが、彼らとしても革新を殺したくはない。おそらくこれからはセキュリティトークンの市場、たとえばトークン化された不動産ポートフォリオなどが見られてくるだろう。これらは1ドルから1000ドルに跳ね上がるということは無いが、14%の利回りを得て、資格のあるバイヤーに売却されるといったような具合だ。セクシーさには欠けるが、このビジネスの成長は見られるだろう。」
-私達は仮想通貨をコモディティと同じように考える必要があると思いますか?
「答えは“はい”と“いいえ”の両方かな。私はビットコインがデジタル版の金(きん)になると思っている。数あるコインの中でこれこそが法的に無限連鎖講となると信じている。例えば、これまで発掘されてきた金が大きなスイミングプールに収まっているとして、あなたはそれが8兆ドルの価値があると言う。あなたは狂っている。でも、それは私たちがそうだと言うからそうなのだ。例えば、イェール大学のファンド部門の最高責任者であるDavid Swensen氏がビットコインに投資を行っているが、彼ほど名誉のある人間が投資しているということは、それだけで何かを教えてくれる。世界の投資業界における賢人たちが、それは価値の保存であると言ってるのだ。」
参考:Bloomberg