米トランプ政権の元経済担当大統領補佐官でアメリカ合衆国国家経済会議の元委員長であるGary Cohn氏が、ブロックチェーンのスタートアップに参加したことが明らかになった。

Cohn氏は、1990年からゴールドマン・サックスに勤務し、債券・為替・コモディティ部門の統括や株式部門の共同責任者を経て、2006年には社長兼共同COOに就任した。2017年にはアメリカ合衆国国家経済会議委員長に就任し、経済担当大統領補佐官を務めていたが、今年3月にトランプ大統領が各国の安価な鉄鋼・アルミニウムの輸入に追加関税を課したことに反対したことが原因で、4月に辞任した。

そんな華麗な経歴を持つCohn氏が次に目をつけたのはブロックチェーン業界だ。財務データを共有するブロックチェーンネットワークを開発している会社「Spring Labs」は12日、Cohn氏が同社の顧問に就任したことを発表した。

Spring Labs社の最高経営責任者(CEO)のAdam Jiwan氏によると、Cohn氏は同社に「世界の金融市場の複雑さと、比類のないネットワークを理解する豊富な経験をもたらした」と語った。同社に対してCohn氏は以下のように語った。

「私は長年に渡ってブロックチェーン技術に非常に関心を持ってきたが、中でも金融サービス部門に非常に大きな影響を及ぼす可能性のあるネットワークを開発しているSpring Labsにはとくに関心を持った。」

同社によってリリースされた情報によると、ソースのデータを共有することなく情報を交換できるブロックチェーンベースのネットワーク「Spring Protocol」を開発中であり、ネットワークにより金融機関間で身元や詐欺、引受け情報などを共有できるようになるという。

Jiwan氏は「主要産業の間で情報とデータがグローバルに共有されるようになるという我々のビジョンへ向けて、Cohn氏と協力できることに興奮を隠せない。」と語り、Cohn氏の協力が得られたことを喜んだ。

金融情報の提供や調査を行っている会社PitchBookによると、Spring Labsは現在までに約1,500万ドル(約16.7億円)を調達しており、顧問委員会には他にもクレジット情報を提供する会社Transunionの元CEOであるBobby Mehta氏や、米国最大の仮想通貨取引所Coinbaseの最高法務責任者Brian Brooks氏などが参加しているという。

過去にウォールストリートからブロックチェーンの業界へ参入していった人間はCohn氏だけではない。J.P.モルガンの元重役のBlythe Masters氏は現在、ブロックチェーン技術に関する研究開発を行うDigital Asset Holdings社のCEOであり、元ゴールドマン・サックスのMatthew Goetz氏は、仮想通貨のヘッジファンドを開始しており、同じくゴールドマン・サックスでCohn氏に雇われたMcDonough氏も、iCashと呼ばれるブロックチェーン企業を経営している。

Cohn氏のように政治や経済の業界で重要な役割を果たしてきた人物のブロックチェーン業界参入は、果たして何をどのようにもたらすのか?彼らが参入した企業やプロジェクトの今後の動向に注目していきたい。

参考:PR Newswire