コロラドの最新デジタル出版社The Colorado Sunは、Civil Media Co.,と提携し、ジャーナリズムとビジネスを両立するためのブロックチェーン技術を構築している。この試みが成功すればニュースはスポンサーや広告の圧力から独立し、ジャーナリズムの追求が可能となり、広告獲得のため躍起となることからも解放されるだろう。
また、Sunの編集者であり、The Denver Postの元編集長であったLarry Ryckman氏によれば、ブロックチェーンが改ざん不可能な公開された元帳である特性から、記事に文責や透明性が加えられるという。誤字脱字などがあれば改訂版を公開することは可能だが、ウェブ上で表示されなくなった過去版もブロックチェーン上には残り続けるため、間違いには真摯な対応が要求され、フェイクは厳しい目に晒されることになるだろう。
また、読者が発行元を検証することで拡散者によるフェイクへの対処も容易となることなどから、ブロックチェーンがジャーナリスト・ジャーナリズムに与える価値は大きいと考えているようだ。その他にもブロックチェーン技術は直接的な寄付など出版物のための新しいタイプの収益モデルを生み出すことが可能だ。
Ryckman氏はヘッジファンドから社説への干渉があったと申し立て、The Denver Postを去った経緯がある。企業やオーナーのためのジャーナリズムではなく、自分たちや読者のために働けることをブロックチェーンに見出したようだ。
この新しいモデルでは読者はクレジットカードや暗号通貨を使用し直接的に支払いをして記事を手にする。広告抜きの直接収益を期待したモデルを維持するためには重要な記事を送り出すライターに責任があるとRyckman氏は理解している。
初期資金としてKickStarterによって1,000万円超のクラウドファンディングに成功しているのと、Civilから助成金として供与された100万ドルがあるが、これらがなくなれば購読者、寄付金、投資家に依存することになるようだが、投資家に依存することになればまたヘッジファンドの二の舞にはならないだろうか。
新たなことへの挑戦は様々な懸念があることは間違いないが、彼や従業員のいずれもThe Denver Postを離れた後も給与は削減されず、The Colorado Sunの未来に自信を持っているようだ。
ジャーナリズムを支えるための活動の一環としてCivilはCVLというデジタルトークンを発行する予定だ。このトークンの所有者はCivilのシステム上での投票権を得られ、通貨として使用することも可能になる。
これらの取り組みは地域社会から大きく支援されており、前述のキックスターターもそうだが、デンバーの主要な繁華街にあるオフィスを無料で貸し出されてもいる。
発行される記事はブロックチェーンや暗号通貨に関するものではなく、やはり読者・支持者の欲しいものであるべきだろう、「素晴らしいローカルジャーナリズムに関するものである」とRyckman氏は語った。
広告を拒否し販売益だけで出版を維持するというモデルだけであればブロックチェーンは必要ないのかもしれないが、ブロックチェーンを選択したのは話題性以外にもやはり改ざん不可能であるという点はジャーナリズムと相性が良いと踏んでのことであろう。寄付に関する考え方が日米で大きく異なるため厳密な比較は難しいかもしれないが、このモデルが成功すれば日本含む世界に波及する可能性は大いにある。