ドナルド・トランプ米大統領は19日、ベネズエラが発行する仮想通貨「ペトロ」について、米国民による購入や米国内での取引を禁止する大統領令に署名しました。

この仮想通貨ペトロの発行は、以前から米国の経済制裁の回避を狙ったベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の戦術であると米国では度々報じられており、トランプ大統領は追加制裁を課した執行令に署名する準備を進めているとも伝えられておりましたが、19日、正式にホワイトハウスより署名が発表された運びとなりました。

トランプ大統領が今回署名した内容は以下の通りです。

「米国人、または米国内において、ベネズエラ政府によって、またはベネズエラ政府の代理人によって2018年1月9日以降に発行されたデジタル通貨、デジタルコイン、デジタルトークン(一般的に言われる仮想通貨全般)に関連するすべての取引、ファイナンスの提供、その他の取引は、この命令の発効日以降禁止されています。」

今となってはトランプ政権がこのような動きを起こすことはそこまで驚くべきことではありません。米議会議員の中には、Bob Menendez上院議員、Marco Rubio議員、そしてその後、政治家のBill Nelsonといった議員たちが仮想通貨の「ペトロ」を発行当初より強く批判しており、米国投資家を守り、ベネズエラの資金調達を阻止する方法を尋ねた手紙を財務相宛に送るなど、早い段階で追加制裁の動きがありました。

石油の埋蔵量が豊富なベネズエラ政府が“石油に裏付けされた仮想通貨”を発行すると聞けば魅力的に見えるかもしれませんが、一部では“墓場行きの通貨”と厳しく評する者もおり、経済誌フォーブスの寄稿者でもあるジョンズ・ホプキンス大学のSteve Hanke教授は、チャベス政権時代にボリバルに代わって2008年1月1日より流通が始まったベネズエラの法定通貨“ボリバル・フエルテ”を例えに出し、「ペトロはチャベス政権時代のボリバル・フエルテの仲間入りだ、同様に“墓場行き”であろう」と報じ厳しく評しました。

石油埋蔵量との関連性についても不明瞭である点からも、投資家にとっても安心感を持てるものではないと考えられるでしょう。

米国は今回、制裁逃れの策略を封じるとともに、石油製品の禁輸を含む追加制裁も発表。追加制裁を決めるとすればいつなのかは明らかにしませんでしたが、禁輸に踏み切れば資金繰りに苦しむマドゥロ政権は窮地に追い込まれることになりそうです。

参考:WhiteHouse.gov