相場の乱高下が激しく、まるで“嵐”のようなビットコイン(BTC)に対し、安定した値動きで実物自体に価値を持つ金は“有事の金”とも呼ばれ、株式や債券とは異なる値動きをする投資対象として重宝されてきました。
この1年間で約12倍となったビットコイン(31日現在、1BTC=10,236ドル)ですが、これに対し金の相場は約12%のプラスとなりました。このことからビットコインが金よりも投資家を豊かにしていることは確かですが、実際に金の代替になるかについては多くの場で熱烈な議論が行われています。
米大手金融、シティバンクの資産管理部門のストラテジストは、
「他の資産クラスが低変動性を記録する中、仮想通貨の変動性における大規模な恩恵は、多くのトレーダーにとっての資金調達手段として歓迎されている。」
と、コメントし、ビットコインが相対的に価格変動の小さい金に比べて値上がり益を狙いやすく、金よりも良いリターンを提供できると前置きした上で、以下のような疑問を投げかけました。
「不変の貨幣供給である“デジタル”な金本位制は、果たして柔軟な資金供給よりも本当に優れているだろうか?」
そもそも歴史的に金と株式は負の相関関係にあるように、株式市場の下落から逃れるための退避先として金を使っている投資家は多く、ビットコインと金には大きな位置付けの違いがあります。
現在、8兆3,000億ドル相当の金が地上には存在し、それは現実の流動性を意味しています。ビットコインは未だ新しい投資対象でもあり、市場の流動性はFXなどと比べてもまだ低いと言わざるを得ません。現在流通している紙幣と比べれば不変の価値を持つ通貨としての立ち位置を徐々に確立してきてはいるものの、現実世界で流動性のある金よりも優れているかと言われると、疑問符が付きます。
ゴールドマン・サックスも、昨年の10月にの投資家へ向けたレポートでは、
「価値を保有するという意味で金は(ビットコインよりも)はるかに優れており、日々の価格の変動率もはるかに低い」
と語っており、2017年のビットコインの価格の変動率の平均は金の平均の約7倍近くになったことを指摘しました。セキュリティで劣る点や、仮想通貨間での競争があることなどから総合的に判断して「仮想通貨は“新しい金”とはいえない」と結論づけております。
採掘量に上限があり有限である点や、証券のような法的責任が本質的に付随していないといった点から、ビットコインと金は多くの類似点がありますが、ビットコインが金にとって変わる日はまだ遠いでしょう。
参考:FORTUNE