米ドルの価格に連動した仮想通貨テザー(USDT)を発行しているテザー社が監査法人フリードマンLLPとの関係を打ち切ったと27日、CoinDeskに伝えられています。

テザー社は、かねてから噂されていたビットコインの市場操作疑惑を打ち消すために監査法人であるフリードマンLLPへ監査の依頼をしておりました。

2017年4月、テザー社は台湾における銀行との関係が断絶されたことが原因で、一時出金ができなくなるといった状況に陥いりました。さらに同年11月、テザーウォレットがハッキングに遭い、不正に3,095万ドル(約35億円)が盗まれたことが明らかになっております。

このように、テザー社は数々の問題に直面していましたが、追い打ちをかけるように昨年9月~今年1月でUSDTの発行量は10倍に増加。銀行との関係を失った後、取引所のビットフィネックスの流動性を維持するためにUSDTが使用された可能性を指摘する声が一部のアナリストから挙がるなど、テザー社とビットフィネックスによるビットコイン価格の市場操作を疑う声が増えてきました。

確かに、ビットフィネックスではUSDTで3倍までのレバレッジを掛けることが出来るため、一時的にビットコインの価格を釣り上げるといったこともテザー社と取引所のビットフィネックスが協力すれば出来ないこともありません。ビットコインの開発を主導するブロックストリーム社の利益を損なわないように、同社が出資している取引所のビットフィネックスの子会社であるテザー社がビットコインを買い支えるためUSDTを新規発行するということは、十分考えられるのではないでしょうか。

米ドルで保証されているはずのUSDTが大量に発行されれば、「本当に保証金(テザーの価値を担保する準備金)あるの?」と疑問に思う人が増えてくるのは当然なことでしょうし、そのUSDTがビットコインの市場操作のために使われていたとなると、一企業が自由に価格を操作できてしまうことになってしまいます。

こういった疑惑を打ち消すため、テザー社は米ニューヨークに本拠をおくフリードマンLLPに監査を依頼していたわけですが、CoinDesk社の広報担当者によると以下のように説明しています。

「比較的単純な貸借対照表履歴で、現在テザーがおかれている複雑な状況を期間内に監査することは不可能。これまで経てきた過程や、このレベルの透明性を追求するのはテザー社が初めてであり、この過程を導く前例もなく、成否を判断するベンチマークもない。」

このような状況のため、監査は打ち切りに至った模様。9月の時点でフリードマンによって発表された暫定的な報告書によると、テザーはUSDTの発行に対応して4,429万ドル(日本円換算で約48億円)の現金準備金を保有しており、これはUSDTの未払い発行と一致していますが、その評価はまだ完全ではなく、多数の警告も含まれていたとされております。

テザー社の疑惑が本当なら仮想通貨業界に与える影響もかなり大きいでしょうし、これまで仮想通貨と法定通貨を繋ぐ銀行的な役割も果たしていたことからも、“テザー問題”は仮想通貨業界全体に多大なる影響を及ぼす可能性もありそうです。

参考:CoinDesk