マイニングスクリプト配信サービス「Coinhive」を使用し、サイト閲覧者にマイニングをさせたことが罪に問われてきた「コインハイブ事件」で、1月20日に最高裁が高裁判決を破棄し、無罪と判断した。

一連の裁判ではこれまで地方裁判で無罪、高等裁判所では有罪が言い渡されてきていたが、最後まで逆転での結末となり、2018年3月に検挙されてから約4年に及ぶ争いに終止符が打たれた。

Coinhiveはウェブサイト上に管理者によって設置されるJavaScriptのサービスで、サイト訪問者が訪問者の計算資源(パソコンやスマートフォン等)を用いて、サイト管理者のためにマイニングを行い、暗号通貨を得るといったもの。

Coinhiveスクリプトを自身の管理するウェブサイト上に設置していた複数名が不正指令電磁的記録保管の罪に問われたが、そのうちの1名のウェブデザイナー男性が略式起訴に不服を申し立て、一連のコインハイブ事件裁判が始まった。

不正指令電磁的記録とはいわゆるコンピューターウイルスにあたり、Coinhiveの設置がコンピュータウイルスの設置にあたると判断されたための起訴だったが、プログラミング界隈から反対の声が高まり、コンピュータセキュリティの専門家である高木浩光氏は「警報で処罰されるものではない」と地方裁判での証人尋問にも応じた。

尋問において高木氏はCoinhiveが閲覧者のデバイス内のファイルには触れられない設計になっており、バックグラウンドでの動作もせず、ウイルスの要件を満たしていないことを指摘。閲覧者の同意を得ずにマイニングをすることの反意図性については認めるものの、構成要件が曖昧なまま処罰されてしまうことで、我が国におけるソフトウェア開発や流通への萎縮効果が出ると述べ、検挙への反対を強調した。

一連の裁判では反意図性と不正性が焦点となったと言える。閲覧者が自身のデバイスでマイニングを行っていることを想起させることは困難だったとして、反意図性があったことは一貫して認められてきた。

一方で、不正性について、一審では「Coinhiveが社会的に許容されていなかったと断定することはできない」として、不正性は否定され無罪が言い渡されたが、続く二審では反対に、Coinhiveプログラムに対して賛否が別れていることは「社会的許容性を基礎づける事情ではなく、むしろ否定する方向に働く事情」と判断し、逆転有罪とされた。

Coinhive登場当初はバナー広告などに代わる新たなウェブサイトのマネタイズ手法として注目を集めたが、消費する計算資源に比べ得られる暗号通貨が少なかったことや、裁判でも焦点となった反意図性からくる訪問者の忌避感の高まりから、設置するサイト管理者はほとんどいなくなり、公判開始当初まではサービスを継続していたものの、2019年3月にはCoinhive自体のサービスも終了となっている。