フランス中央銀行で上層部として務めるDenis Beau氏は、公的通貨金融機関フォーラム(略称OMFIF)の場で「仮想通貨に対する活動及びそれに対するリスクが同じであるとするなら、世界でその規制の取り組みを統一するべきである」と言う自身の考えを述べた。
この発言は、フェイスブックが立ち上げたLibraに対して牽制を掛ける背景が含まれており、今年の6月に立ち上がったそれは、Denis氏によれば中央銀行などが取り仕切っていた法定通貨の金融システムや、規制当局に大きな影響を及ぼしかねないと伝えている。
なお中央銀行の発行するデジタル通貨のCBDC(Central Bank Digital Currency)をLibraとの引き合いに出して、CBDCはリスクを抑えながら円滑な市場をもたらすだけでなく、市場支配力も大きくなると付け加えた。
CBDCは中国やタイ、シンガポールと言ったアジア各国。スウェーデンやカナダやバハマなどの国で導入実験が行われている。日本銀行もCBDCを出す可能性があると発言しており、一方で慎重な姿勢も見せているものの、利便性を大いに活用していこうと言う気運がある。
またその気運を高めたのは、Libra構想があるからだと言う指摘がある。実際にDenis氏がCBDCを引き合いに出してきた事からもそれは明白で、コストを減らしたり金融政策がより円滑に出来るようにする目的がCBDCにはあると言う。これらの一連のDenis氏による発言はLibraだけを目の敵にしたものではなく、仮想通貨全般に対するカウンターアタックとしてCBDCを用意されていると見られる。
とは言えCBDCを推し進めるきっかけとしてLibraの存在が大きいことは確かだろう。Libraによってこれまでの金融システムが一変してしまうことに対する抵抗心や、セキュリティに対する拭いきれない不安などもあるにはあるが、中央集権の要を揺るがされかねないことへの過剰な対応にも感じられる。
いずれにせよ、どんな形であれ中央銀行によって取り仕切られていたシステムに大きな変革が起ころうとしているのは間違いないようだ。
参考:フランス中央銀行(PDF)