ここ数週間、中国当局は国内の仮想通貨の活動に対する圧力を強めている。
中国・北京は基本的にブロックチェーン技術の開発に関してはサポートする姿勢を示しているが、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)を禁止してからおよそ1年、今度は仮想通貨での投機を制限しようとしているようだ。
ブロックチェーン技術は、銀行など第三者の仲介者の必要性を排除し、2者間のトランザクションを安全かつ永続的に記録することが可能だ。ビットコイン(BTC)は、このテクノロジーによって出来た最初のアプリケーションであり、この後も何百もの仮想通貨が登場した。
投資家がブロックチェーンの技術を、かつて世界を変えたインターネットと同等のものと評価するにつれて、ビットコインの価格は上昇していった。以来、中国を含む主要企業や政府はこの技術を使ったテストを行い続けているが、まだその規模はインターネットほどとは言えない。
その後、中国はビットコイン取引を支配してきたが、さらに「マイニング」というプロセスを通じてビットコインの大部分を占めることになっていった。しかし、ビットコインの価格が上がっていくと、中国当局は規制強化に踏み切り、中央銀行などの金融当局が昨年9月にICOの全面禁止などを発表した。北京もまた、国内のビットコイン取引を禁止した。
同時に、日本、韓国、米国などの投資家は、ビットコインに関心を強めていき、昨年12月にはついに1万9000ドルを上回るほどの価格までになった。中国本土では引き続き開発が進められたが、多くのブロックチェーンプロジェクトは本社から海外へと移っていった。
そして今年の8月24日、中国人民銀行、銀行規制委員会、中央サイバースペース委員会、公安省、市場規制局の5つの政府機関が、ブロックチェーンと仮想通貨での違法募金のリスクについての警告を発表した。この発表は、中国の投資家をターゲットにした海外のサーバーを使用した人々へも向けられた。
同日、広東省深セン市に本拠を置く中国の大手企業Tencentは、中国のメッセージングアプリWeChatによる仮想通貨取引での支払いを禁止すると発表した。Tencentは、アリババ、バイドゥと並ぶ中国の3大ネット企業の一つとされており、WeChatは日本で言うところのLINEに相当するメッセンジャーアプリだ。
CNBCが発表した声明によると、TencentはICOの提供および仮想通貨取引に関する情報を公表したとされるWeChatのいくつかの公式アカウントをブロックしたという。
さらに、8月17日には、ビジネスエリアとされる北京の朝陽区では、ショッピングエリア、ホテル、オフィスビルでの仮想通貨のプロモーションイベントを禁止した。中国の新聞ナショナル・ビジネス・デイリーは先週、南部の広州市の特別経済開発区でも同様の禁止を発表したと報じた。
台湾の電子OEM会社Foxconnのテクノロジー・グループのベンチャー部門であるHCMキャピタルの取締役社長Jack Lee氏によると、中国政府は財政の安定を維持したいと考えており、投資のための一般人からの資金募集などの活動を規制する方針であるという。
同社は多くのブロックチェーンプロジェクトに投資しており、Foxconnのプライベート・エクイティ部門でもあり、中国のAppleのiPhoneメーカーとして最も知られている企業である。
政府はブロックチェーン技術を受け入れてはいるが、仮想通貨の投資に関する規制については緩和するとは考えていないとLee氏は述べた。
中国の仮想通貨に対する規制強化の姿勢は確かに強まってきているように思えるが、北京で仮想通貨の専門サイトHecaijingを立ち上げたFeng Jun氏によると、仮想通貨の価格は昨年末のピーク時と比べると確かに大幅に下がってはいるが、こうした中国政府の規制強化の姿勢にも関わらず、価格は比較的安定してきていると指摘した。多くの人にとっては当局の動きは、口だけでそこまで行動には移さないというイメージもあるようだ。
人民銀行によるデジタル人民元の発行や、仮想通貨関連の事業の立ち上げを進めている企業など、水面下では仮想通貨関連の活動は続いているとも言われている。仮想通貨大国である中国が、デジタル通貨革命から取り残されるわけにはいかない以上、規制についても慎重に進んでいくのではないだろうか。
参考:CNBC