日本銀行の黒田総裁はG20財務相・中央銀行総裁会議の後の記者会見の場で、グローバルなステーブルコインに対して否定的な立場である事を改めて伝えた。「ステーブルコインは金融に革命を起こす可能性がある事は知っているが、様々な考えられる影響を考えると否定的にならざる得ない」と言うのが氏の見解である。

黒田氏は9月24日に開かれた大阪の講演会でもLibraに対して「G7及びG20としても、セキュリティや支払いについてなど様々な課題に対して考えなければいけない」と語っている。また、今月20日に名古屋市立大学で開かれた「マネーの将来」と言う講演では次のようにも述べた。

「中央銀行が出すお金は、自分達の債務を低いコストで発行出来ている。一方仮想通貨は遥かに歴史が浅いので信用度も歴然の差があり、それをカバーするためにはマイニングが必要だが、膨大な電気代がかかるため仮想通貨が広く普及するには、まだまだ時間がかかる」

またG20財務相・中央銀行総裁会議の後の記者会見の場では、中央銀行がLibraのようなデジタル通貨を発行する可能性についても問われたが「G20としても具体的に意見は交わされていないし、日銀としても前向きに検討していない」と答えた。

とは言え、日銀として見た場合でも仮想通貨に対し決して否定的な意見だけではなく、仮想通貨でよく用いられているブロックチェーンや分散型台帳技術については高評価しており、欧州中央銀行と分散型台帳技術の調査計画「Project Stella」を実行中だ。

また、日本の仮想通貨への取り組みは規制一辺倒である世界に比べて市場を走らせ続けており、経済誌のフォーブスは「ビットコインの鍵は日本が握っている」とまで書いている。

世界的に見ても今回の黒田氏の否定的な意見も『冷静な評価』として好意的に受け止められるのではないだろうか。

参考:REUTERS