自民党がデジタル通貨発行へ向けて、個人情報保護やマネーロンダリング防止の観点から今年春にも提言をまとめる動きを見せた。先日、日銀が欧州中央銀行などとデジタル通貨の共同研究に乗り出したことを受け、将来的に必要になってくる新規立法に備えるためと見られる。

自民党調査回や議員連盟が提言を取りまとめるとしているが、デジタル通貨もまた仮想通貨同様にブロックチェーンが使用されることが想定されており、誰がいつからどれだけの通貨を保有しているかなどといった個人情報が保護されるか、といったことに関心を寄せている。

さらに、サイバー攻撃による偽造通貨の濫造やマネーロンダリングなどといった問題にどれだけの影響があるのかを検討し、現行法と関わる場合に関連法案の見直しがどれだけ必要であるかといった議論も進めていく。

日本経済新聞によれば、今回の自民党の動きはデジタル通貨で先んじる中国への警戒感も背景にあると指摘している。

自民党の甘利明税制調査会長は、デジタル人民元に対して「米中の中長期の覇権争いに影響する可能性がある」と語り、デジタル通貨にいち早く着手した中国に対して警戒感を示しす。また、政府に警鐘を鳴らす役割を果たしたいとも述べている。

安全性と個人情報の保護を天秤にかけ、デジタル通貨がどこまで個人情報を保護し、口座が犯罪に関わるようなことがあれば情報の開示はどのような権限を持って行われるのか、検討すべき項目は計り知れないほど多くある。

また、自民党が積極的に乗り出す理由として、政治と金問題における資金移動の不透明さを明瞭にする足がかりとなるよう要求される前に先手を打った可能性も考えられる。痛い腹はなくとも誰でも金の流れが探られるのが嫌な気持ちは理解が得られるだろう。ブロックチェーンの活用法が公然と知れ渡る前にプライバシー保護の大義名分を掲げて堅牢なデジタル通貨を法令で定めるという意図があってもおかしくはない。

いずれにせよ中国に先手を打たれたままで、データも資金もデジタル人民元に集まるような状況を避けたいというのは国際的に目論見が一致しているところでもある。QR決済の利便性が中国で認められたのちに日本でも追随したように、デジタル通貨においても後塵を拝するか、同じ立場で競争できるかが今に掛かっている。

参考:日本経済新聞