米投資信託会社大手Fidelity(フィデリティ)は15日、機関投資家のための仮想通貨の保管と取引執行を扱う会社「Fidelity Digital Asset Services」の立ち上げを発表した。

Fidelity Investmentsの会長兼CEOのAbigail Johnson氏は、「我々の目標は、ビットコインなどのデジタル資産を投資家が利用しやすくすることです。」と述べた。さらに、「新しい資産クラスを顧客が理解して使用しやすくする方法を長期的に投資、および実験し続けることを期待しています。」とプレスリリースで語った。

機関投資家を対象にした仮想通貨取引プラットフォームの立ち上げとデジタル資産ソリューションを提供する子会社「Fidelity Digital Assets」のCEOであるTom Jessop氏によると、このスタンドアローンの仮想通貨会社を商業化するという考えは昨年の中頃から始まっていたという。

またこのサービスは、ヘッジファンドや、慈善団体、家族事務所などの機関で利用できるが、個人投資家の利用は現在はできないという。同サービスは今年6月に計画していることを明らかにし、9月には年内に開始するとも伝えられている。

Jessop氏は、「機関が必要としているものの中に、フィデリティのような会社しか提供でないものがあることがわかったのです。フィデリティの他の部門から再利用した技術もあります。大きな組織のすべてのリソースを活用することができるのです。」とCNBCに語った。

世界最大級の金融企業Fidelityは、顧客資産で7.2兆ドル(約807兆円)を管理し、2700万人の顧客を有し、人工知能やブロックチェーンの技術を収容するインキュベーターを通じてその技術に年間25億ドル(約2800億円)も費やしている巨大投資企業である。今回発表された新しい会社は、Fidelityにおけるイノベーション創出ラボ「Fidelity Center for Applied Technology(FCAT)」の取り組みの中で立ち上げられたものであり、既に13,000人の機関投資家と協力していることも同社は明らかにしている。

新会社のFidelity Digital Asset Servicesは、カストディの扱い、またはデジタル資産の安全な保管を取り扱うことになる。米仮想通貨取引所のCoinbase、Gemini、BitGo、Ledger、およびItBitも、すでに同様のソリューションに取り組んでいるという。

日本の野村ホールディングスも今年5月に、デジタル資産のカストディ・サービスを提供する計画を発表しており、米ゴールドマン・サックスと資産運用大手のノーザン・トラストもカストディ・サービスを検討している。

大手企業の相次ぐカストディ・サービスの参入により、機関投資家の資金が流入していく可能性は高い。今後もサービスの進行から目が離せない。

参考:CNBC