Microsoftは今週、分散型ID(Decentralized Identities)用のプラットフォームを構築するためにブロックチェーンを利用する計画を発表した。

分散型IDとは、SNSなどでいう個人のアカウントに似ているが、企業によってアカウントが管理される中央管理型とは違い、ユーザーが個人で管理することができるIDのことをいう。Microsoftは今週リリースされたホワイトペーパーで以下のように述べた。

「私たちはそれぞれ、デジタルなアイデンティティーを必要としており、そのデジタル・アイデンティティーの要素は安全かつ秘密に保存されている必要があります。自己が所有するそのデジタル・アイデンティティーは、私たちの生活にシームレスに統合されなければならず、アイデンティティーのデータにアクセスして使用する方法は完全に制御されている必要があります。」

ホワイトペーパーによると、同社は個人データの管理を強化する2つの製品を開発しているという。製品の1つ目は「IDハブ」。これは暗号化された個人データストア、またはMicrosoftがすでに提供中のサービスであるアジュール(Azure)のクラウドコンピューティングサービスを通じて提供するユーザーのパーソナルデバイスとクラウドストレージの組み合わせである。

詳細はほとんど示されていないが、一般的な考え方として、消費者はこのハブにID情報を格納でき、サードパーティがID情報にアクセスするためにはその許可が必要となる。データが無数の第三者に保持され、ユーザーの認識なしに、またはほとんど同意が得られない状態で定期的に取得されるような現状とは対照的なサービスとなる。

そして2つ目は、「ウォレット型アプリ」だ。人々が他の目的のために、必要に応じて取り消しができる機能を含め、データに対するこれらのアクセス許可を管理することができるアプリだ。

分散型IDは分散台帳や別の分散システムに登録されているため、中央の権限を必要としない。電話番号やTwitterといったような従来の識別子とは異なり、常にユーザーの管理下にあるということだ。仮想通貨ユーザーが自分の資産を自分の管理下に置いているのと同じ仕組みである。

さらにMicrosoftは、複数のブロックチェーンの上位層となる2つ目の階層(セカンドレイヤー)として機能する分散型IDのオープンソースの実装も開発中であると語った。これはBitcoin上で動作するペイメントプロトコルのLightning Networkに近いものとされており、仮想通貨を使い高容量で低値の支払いを可能にすることを意図しているという。ホワイトペーパーによれば、「世界規模の使用を目的とした設計がなされている」ということだ。

「すべての人は、自分が所有し、管理しているアイデンティティーの権利を持っています。私たちは、分散型IDをマイクロソフトのアイデンティティスタックの第一級オブジェクトにしたいと考えています。」

このようにホワイトペーパーで語られているように、今後個人データを自分で管理できるようになれば、今後は身分証として様々な分野で使用されていく可能性もある。個人の情報漏洩が増える中、TwitterやGoogle、FacebookなどがMicrosoftの動きに対してどう動くのかも気になるところだ。

参考:Microsoft